📌 この記事のポイント

65歳以降も働くことで老後資金の取り崩しペースを大幅に抑えられます。しかし「在職老齢年金」の仕組みで収入が増えると年金が減額される場合も。継続雇用・再就職・フリーランス・起業それぞれの手取り額と社会保険負担を正確に理解した上で働き方を選ぶことが重要です。

65歳以降に働く「経済的価値」

老後の資産計画において、「65歳以降も少しでも働く」ことは極めて強力な戦略です。仮に月10万円の収入が70歳まで5年間続いた場合、累計600万円の収入になり、その分だけ資産の取り崩しを減らすことができます。

また、働くことで年金の受取開始を繰下げる時間的余裕が生まれ、繰下げによる増額効果と組み合わせることで老後の総受取額を大幅に増やすことができます。

📌 働きながら繰下げの最強の組み合わせ

65〜70歳まで月15万円を稼ぎながら年金を70歳まで繰下げた場合:
①働いた5年間の収入:900万円
②70歳以降の年金月額:基礎年金のみ繰下げで月約+1.2万円(終身増額)
③80歳時点での追加受取額:約144万円(①+②の累積優位性)
合計で1,044万円以上の老後資産改善効果が見込めます。

在職老齢年金の仕組みと影響

65歳以降も会社員・公務員として働き、厚生年金に加入し続ける場合、一定以上の収入があると年金が減額・停止される「在職老齢年金」の制度が適用されます(2022年4月改正版)。

65歳以降の在職老齢年金の計算方法

2022年4月以降、65歳以上の基準月額は50万円(2026年度)に統一されました。

基本月額+総報酬月額相当額 年金の支給停止
50万円以下 停止なし(全額支給)
50万円超 超過額の1/2が停止
💡 具体例

老齢厚生年金(月)15万円+給与(月)40万円=55万円。50万円を5万円超えているため、5万円×1/2=2.5万円が停止。受け取れる年金は12.5万円になります。給与月額が35万円以下なら停止額はゼロです。

⚠️ 基礎年金は停止されない

在職老齢年金で減額・停止されるのは老齢厚生年金のみです。老齢基礎年金(満額で年約81万円)は働き続けても減額されません。また、パートや短時間労働で厚生年金に未加入の場合は在職老齢年金の対象外です。

65歳以降の働き方と手取り比較

働き方によって、収入・社会保険負担・税負担が大きく異なります。主な4つの働き方を比較します。

継続雇用(同じ会社)
再雇用・継続雇用制度
月20〜30万円
正社員時代比 60〜70%程度が多い
✅ 社会保険継続・雇用安定
✅ 通勤・業務に慣れている
⚠️ 役職なし・給与ダウンが一般的
⚠️ 厚生年金加入で在職老齢年金の対象になる可能性あり
再就職(別会社・転職)
新たな会社・業界への就職
月15〜25万円
職種・経験により差が大きい
✅ スキル・経験を活かした転職
✅ 気持ちのリフレッシュ
⚠️ 採用のハードルが上がる
⚠️ 新環境への適応コスト
フリーランス・副業
個人事業主として働く
月10〜40万円
スキルと営業力次第で幅が大きい
✅ 時間・場所の自由度が高い
✅ 厚生年金加入なし→在職老齢年金の対象外
⚠️ 収入不安定・自己管理が必要
⚠️ 国民健康保険料が高くなりやすい
起業・法人設立
自ら事業を立ち上げる
月0〜100万円超
成功すれば大きいが失敗リスクも
✅ 経験・人脈を最大活用できる
✅ 働く動機・やりがいが高い
⚠️ 初期投資・リスクあり
⚠️ 老後資金を事業に投入するのは危険

手取り額の実際(社会保険・税金を考慮)

65歳・年金月15万円(厚生年金)を受け取りながら働く場合の手取り額を比較します。

働き方 給与・売上(月) 社会保険料(月) 所得税・住民税(概算月) 年金停止額(月) 実質手取り合計(月)
継続雇用(給与25万円) 25万円 約3.7万円(健保+厚年) 約1.5万円 0円(50万円以下) 約34.8万円
継続雇用(給与40万円) 40万円 約5.8万円 約3.0万円 約2.5万円 約43.7万円
フリーランス(月収20万円) 20万円 約2.5万円(国保) 約1.0万円 0円(厚年未加入) 約31.5万円
パート(月収10万円・社保未加入) 10万円 0円(後期高齢保険は年金から別途) 約0.3万円 0円 約24.7万円
💡 フリーランスは在職老齢年金の対象外

個人事業主(フリーランス)として働く場合、厚生年金に加入しないため在職老齢年金の減額対象になりません。給与が50万円を超えそうな高収入継続雇用と比べると、フリーランスは収入増加分が全額手取りに反映されやすい面があります。

📊 65歳以降の働き方と老後資産をシミュレーション

働く年数・収入・年金タイミングを組み合わせて老後資産の枯渇リスクを試算。「いつまで働けばFIREできるか」も計算できます。

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社会保険加入の損得勘定

65歳以降の会社員は健康保険・厚生年金に引き続き加入します。「70歳になっても厚生年金に加入できるか」「加入すると将来の年金が増えるか」を正確に理解しましょう。

厚生年金の上限年齢

  • 厚生年金の加入上限は70歳。70歳以降は厚生年金保険料を支払わなくなります
  • ただし、65歳以降に厚生年金に加入し続けると、在職老齢年金の対象として年金が一部停止されるリスクがある(収入次第)
  • 65〜70歳の間に厚生年金加入期間が増えると、70歳到達時に年金額が再計算され、増額されます(在職定時改定・毎年10月に実施)

健康保険の選択

  • 会社員なら健康保険(協会けんぽ等)に加入。保険料は会社と折半
  • 退職後・フリーランスなら国民健康保険へ移行。75歳以降は後期高齢者医療制度に自動移行
  • 国民健康保険料は前年所得に応じて計算されるため、退職後最初の1〜2年は高くなりやすい

現実的な働き方プランニング

65歳以降の働き方は「いくら稼ぐか」だけでなく「何年働けるか」「どんな働き方が持続可能か」という観点も重要です。

段階的な就業縮小戦略

  1. 65〜67歳:フルタイム or 週4日→継続雇用・再就職で収入を最大化。年金は67〜68歳まで繰下げ
  2. 68〜70歳:週3日・副業・フリーランス→プレッシャーを減らしながら収入継続。年金は70歳まで繰下げ
  3. 71〜75歳:週1〜2日・趣味的就業→月5〜10万円程度の小収入でも資産取り崩し抑制に有効
  4. 76歳以降:完全引退→70歳以降の増額された年金+資産で生活
⚠️ 老後の起業は慎重に

「老後に趣味で小さなお店を持ちたい」という夢はよくありますが、飲食・小売の開業失敗率は高く、老後資金を失うリスクが大きいです。起業するなら「初期投資ゼロ〜最小限」のビジネスに限定し、老後資金の10%以上を事業に投入しないことを強くおすすめします。

📌 まとめ:老後の働き方の3原則

働ける期間を最大化する:少額でも長く働くことで老後資産の減少ペースを大幅に抑えられる。②在職老齢年金の基準(月50万円)を意識する:収入が増えると年金が停止されることがあるため、収入設計に注意。③年金繰下げと組み合わせる:働きながら年金を70〜72歳まで繰下げることで終身の収入を増やし、長寿リスクに備える。