シーケンス・オブ・リターン・リスク:取り崩し開始直後の暴落が老後資産を壊す仕組みと対策
年平均リターン5%でも、「最初の5年に大暴落が来るケース」と「最後の5年に大暴落が来るケース」では、30年後の残高が2,000万円以上違うことがあります。これが「シーケンス・オブ・リターン・リスク(リターン順序リスク)」。積立期間には影響がほぼなく、取り崩し期に初めて爆発するこのリスクの仕組みと防衛策を解説します。
なぜリターンの「順序」が重要なのか
積立(買い増し)期間中は、暴落があっても安く買えるため長期的には問題になりません。しかし取り崩し(売却)期間に入ると話が変わります。
取り崩し期に暴落すると、値下がりした資産をより多く売却しなければなりません。資産が大きく減った状態で毎月売り続けるため、その後に相場が回復しても残高が少なすぎて恩恵を受けられないのです。逆に取り崩し終盤の暴落は、すでに多くを使い切っているため影響が限定的です。
暴落タイミング別シミュレーション
2,000万円を元手に毎月8万円(年96万円)を取り崩す30年間のシミュレーション。年平均リターンは同じ+5%、ただし暴落(−30%)が「最初の3年」か「最後の3年」かで比較します(概算)。
取り崩し開始後3年で暴落
取り崩し終盤28〜30年目に暴落
同じ平均リターンでも、暴落のタイミングだけで約1,700万円の差が生じます。早期暴落シナリオでは途中で資産が急減し、その後の回復に乗れる元本が少なすぎるためです。
積立期間に影響しない理由
積立(買い増し)期間中は、暴落があっても安く口数を多く買えるため、長期平均リターンにほぼ影響しません。30年間積み立てた場合、最初の数年に暴落があっても最終資産額にほとんど差が出ないのはこのためです(ドルコスト平均法の効果)。
しかし取り崩し期に入ると、この緩衝効果が逆転します。暴落時に割安で口数を増やせる機会がなく、ただ「値下がりした資産を毎月売り続ける」状況になるため、資産の急減を防げません。
3つの防衛戦略
シーケンス・オブ・リターン・リスクは「いつ退職するか」に依存するため完全に回避はできません。しかしバケツ戦略だけでも実装すれば、最もダメージが大きい「早期大暴落」のシナリオを大幅に緩和できます。退職前から準備できるボンドテントと組み合わせれば、さらに堅牢な取り崩し計画が完成します。