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iDeCoの一時金と退職金の受取順序:2026年の控除調整ルール改正(9年内・19年内)と税額への影響

📅 2026-06-20(2026年11月更新) 📖 約18分 🎯 中級〜上級 ✍️ マネトモ編集部

2026年1月から、iDeCo(確定拠出年金の老齢給付金)を一時金で受け取った後に退職金を受け取る場合の、退職所得控除の調整期間が「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に延長されました。一方、退職金を先に受け取った後にiDeCoを一時金で受け取る場合は、以前から「前年以前19年内」が調整の対象で、この部分は今回の改正で変わっていません。つまり「退職金を先にもらい、10年後にiDeCo」としても、控除は調整されます。本記事では、国税庁の定めに沿って受取順序ごとの税額を再計算し、注意点を整理します(2026年11月更新)。

📋 この記事の目次
  1. 2026年の改正は何が変わったのか:4年内→9年内と、変わらない19年内
  2. 受取順序による税額の違い:4つの受取パターンを比較
  3. 退職金額別の試算:受取順序で税額はどれだけ違うか
  4. 転職者の企業型DC移換と勤続年数・加入期間の通算
  5. よくある失敗例と対策:5つの落とし穴
  6. まとめ:受取戦略設計の5ステップチェックリスト

2026年の改正は何が変わったのか:4年内→9年内と、変わらない19年内

退職所得控除の基本的な計算式

退職金やiDeCo・企業型DCを一時金で受け取る場合、退職所得控除が適用されます。控除額の計算式は、勤続年数(iDeCoなどの場合は加入者期間)によって以下のように異なります。

例えば、勤続30年の場合、退職所得控除は 800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円 です。控除額を超えた部分の2分の1が課税対象(課税退職所得)となり、他の所得とは分けて税額が計算されます(分離課税)。

控除額が調整される3つの場合(国税庁 タックスアンサー No.2732)

退職手当等を複数回受け取ると、前の受取と勤続期間が重なる部分(重複期間)について、後の受取の退職所得控除が小さくなります。調整の対象になる期間は、受取の組み合わせによって次のように異なります。

受取の組み合わせ 調整の対象になる期間 2026年の改正
退職金 → 退職金(会社Aの後に会社B など) 前年以前4年内 変更なし
iDeCo等の一時金 → 退職金 前年以前9年内(2026年1月1日以後の受取分) 4年内から9年内に延長
退職金 → iDeCo等の一時金 前年以前19年内 変更なし(2022年4月に14年内から19年内へ延長済み)
このルールのポイント
・今回延長されたのは「iDeCoなどの一時金を先に受け取り、その後に退職金を受け取る」場合だけです
・「退職金を先に受け取り、後からiDeCoを受け取る」場合は、以前から前年以前19年内が調整の対象です。10年空けても調整されます
・iDeCoの受取開始は75歳までなので、60歳で退職金を受け取った場合、19年内を避けるのは現実的には難しくなります
・調整の対象になるのは「受取の年」で判定します(暦年ベース)

※旧版では、これを「5年から10年への延長」と説明し、「退職金を先に受け取り10年後にiDeCoを受け取れば控除を満額使える」と書いていましたが、誤りでした。

調整後の控除額の計算方法

重複期間がある場合、後に受け取る退職手当等の退職所得控除は次のとおりです。

調整後の控除額 = 今回の勤続年数(加入期間)で計算した控除額 − 重複期間の年数で計算した控除額

⚠️ 特に注意が必要なケース
・60歳で退職金を受け取り、その後65歳などでiDeCoを一時金受取する場合(19年内)
・iDeCoを60歳で一時金受取し、65歳で退職金を受け取る場合(9年内)
・企業型DCとiDeCoを別々の年に一時金で受け取る場合
・転職により複数の会社から退職金を受け取る場合(4年内)

受取順序による税額の違い:4つの受取パターンを比較

4つの受取パターン

  1. パターン1:退職金を先に受け取り、後でiDeCoを一時金で受け取る(19年内)
  2. パターン2:iDeCoを先に一時金で受け取り、9年内に退職金を受け取る
  3. パターン3:iDeCoを先に一時金で受け取り、退職金を10年以上あとに受け取る(受取の年が10年以上離れ、調整の対象にならない)
  4. パターン4:同じ年に両方を受け取る(勤続期間を通算して、控除は1回分)

なお、iDeCoを年金形式で受け取る場合は、退職所得ではなく雑所得(公的年金等控除の対象)になるため、上の調整の対象外です。ただし、公的年金との合計額で税や社会保険料が変わります。

モデルケース1:退職金1,500万円・iDeCo500万円・勤続30年の場合

⚠️ 以下のケースはすべて仮想の人物設定によるシミュレーションです。実在の人物・事例ではありません。数値は概算であり、実際の税額を保証するものではありません。

前提条件

パターン 退職所得控除(退職金/iDeCo) 課税退職所得 税額(概算)
1:退職金先→iDeCo後(19年内) 1,500万円/80万円(600万円−重複分600万円=0、最低80万円) 0円/210万円 約32.5万円
2:iDeCo先→退職金(9年内) 600万円/1,020万円(1,500万円−重複期間12年分の480万円) 0円/240万円 約38.5万円
3:iDeCo先→退職金10年以上後 600万円/1,500万円 0円/0円 0円
4:同じ年に両方 1,500万円(通算した勤続30年分のみ) 250万円 約40.6万円

パターン2の重複期間12年は、前に受け取ったiDeCo 500万円が、その加入期間15年で計算した控除額600万円に満たないため、500万円÷40万円=12年とみなして計算した結果です。

シミュレーション結果(想定):パターン1〜4の差は、約6〜8万円です。退職金が控除内に収まるため、影響は比較的小さくなります。ただし、パターン3のように受取の年を10年以上離せれば税額は0円ですが、実際には「退職金を10年以上あとに受け取る」状況(60歳でiDeCoを受け取ったあと、70歳以降に退職する場合など)に限られます。

モデルケース2:退職金2,500万円・iDeCo800万円・勤続35年の場合

前提条件

パターン 退職所得控除(退職金/iDeCo) 課税退職所得 税額(概算)
1:退職金先→iDeCo後(19年内) 1,850万円/80万円(800万円−重複分800万円=0、最低80万円) 325万円/360万円 約121.6万円
2:iDeCo先→退職金(9年内) 800万円/1,050万円(1,850万円−重複期間20年分の800万円) 0円/725万円 約177.8万円
3:iDeCo先→退職金10年以上後 800万円/1,850万円 0円/325万円 約55.7万円
4:同じ年に両方 1,850万円(通算した勤続35年分のみ) 725万円 約177.8万円

シミュレーション結果(想定):パターン1とパターン2・4の差は約56万円、パターン3との差は最大で約122万円です。退職金が控除を超える規模になると、受取順序と受取の年の間隔の影響が大きくなります。

受取順序を考えるときの目安

退職金額別の試算:受取順序で税額はどれだけ違うか

退職所得は他の所得と分けて税額を計算する(分離課税)ため、年収の高低で税額は変わりません。ここでは、退職金とiDeCoの金額の組み合わせ別に比べます。いずれも、iDeCoの加入期間が退職金の勤続期間に含まれると仮定した、仮想の試算です。

退職金1,200万円(勤続28年)・iDeCo400万円(加入12年)

パターン 課税退職所得 税額(概算)
1:退職金先→iDeCo後(19年内)iDeCo分 160万円約24.2万円
2:iDeCo先→退職金(9年内)退職金分 120万円約18.1万円
3:iDeCo先→退職金10年以上後0円0円
4:同じ年に両方120万円約18.1万円

それぞれ単独なら課税されない金額でも、受取の組み合わせによっては調整で課税される場合があります。

退職金2,000万円(勤続33年)・iDeCo650万円(加入18年)

パターン 課税退職所得 税額(概算)
1:退職金先→iDeCo後(19年内)退職金145万円+iDeCo285万円約69.5万円
2:iDeCo先→退職金(9年内)退職金465万円約97.8万円
3:iDeCo先→退職金10年以上後退職金145万円約21.9万円
4:同じ年に両方470万円約99.3万円

退職金3,000万円(勤続38年)・iDeCo1,000万円(加入23年)

パターン 課税退職所得 税額(概算)
1:退職金先→iDeCo後(19年内)退職金470万円+iDeCo460万円約195.6万円
2:iDeCo先→退職金(9年内)退職金940万円約253.9万円
3:iDeCo先→退職金10年以上後退職金470万円約99.3万円
4:同じ年に両方970万円約267.0万円
試算から分かること
・退職金が大きいほど、受取順序・受取の年による税額の差は大きくなります(この試算の範囲では、数十万円〜約150万円)
・「どの順序が最も有利か」は、金額や加入期間によって変わり、一つの結論には決まりません。旧版の「退職金を先、10年後にiDeCo」が最も有利という結論は誤りでした
・実際の税額は、加入期間と勤続期間の重なり方、受取の年、他の所得などで変わります。受取の前に、必ず個別に確認してください

転職者の企業型DC移換と勤続年数・加入期間の通算

企業型DCからiDeCoへの移換と加入期間

転職などで企業型DCの資産をiDeCoに移換した場合、老齢給付金を一時金で受け取るときの退職所得控除は、企業型DCとiDeCoの加入期間を通算した期間(通算加入者等期間)で計算するのが一般的です。移換の手続きや通算の扱いは、運営管理機関や加入していた制度によって異なる場合があるため、受取の前に確認してください。

転職3回のケーススタディ

⚠️ 以下のケースは仮想の人物設定によるシミュレーションです。実在の人物・事例ではありません。

想定プロフィール:Hさん(60歳)

控除額の考え方

C社の退職金を先に受け取ってiDeCoを後から受け取る場合は、19年内の調整の対象になります。iDeCoの加入期間のうちC社の勤続期間と重なる15年分が、iDeCo側の控除から差し引かれます(この例では、差し引いても控除は1,250万円残り、800万円は控除内)。

移換せずに一時金を受け取っていた場合

A社やB社を退職したときに企業型DCを一時金で受け取っていた場合、その受取年が「前の退職手当等」になり、その後に受け取る退職金やiDeCoの控除の調整に影響する場合があります。受け取る前の段階で、受取年と対象期間(4年内・9年内・19年内)を必ず確認してください。

⚠️ 転職者が特に注意すべきポイント
・企業型DCを一時金で受け取るか、iDeCoに移換するかで、その後の控除の使い方が変わります
・過去に受け取った退職金・DC一時金の受取年と勤続期間を整理しておく
・複数の退職金・DCがある場合は、税理士に相談することを推奨

よくある失敗例と対策:5つの落とし穴

失敗例1:「退職金を先、5年以上空ければ大丈夫」と思い込んだ

⚠️ 以下のケースはすべて仮想の人物設定によるシミュレーションです。実在の人物・事例ではありません。

ケース:Iさん(65歳)

結果(想定):退職金を先に受け取った後にiDeCoを一時金で受け取る場合は、前年以前19年内が調整の対象です。iDeCoの控除は最低の80万円となり、課税退職所得210万円・税額約32.5万円が発生(モデルケース1のパターン1と同じ)。

対策:「何年空ければよいか」は、受取の組み合わせによって異なります(退職金→退職金は4年内、iDeCo→退職金は9年内、退職金→iDeCoは19年内)。受取の前に、組み合わせごとの対象期間を確認します。

失敗例2:同じ年にまとめて受け取った

ケース:Jさん(60歳)

結果(想定):同じ年に受け取ると、勤続期間を通算した30年分の控除1,500万円しか使えません。合計2,000万円から控除1,500万円を引いた500万円の2分の1、250万円が課税され、税額は約40.6万円(モデルケース1のパターン4)。

対策:受取の年を分けるべきかどうかは、金額と加入期間によって変わります。同じ年にまとめるか、別の年にするか、年金形式にするかを、事前に試算して比べます。

失敗例3:年金受取の税・社会保険料の負担を考慮していなかった

ケース:Kさん(65歳)

結果(想定):公的年金とiDeCoの年金の合計が、公的年金等控除を超える部分に課税され、国民健康保険料や介護保険料の負担にも影響する場合がある。

対策:年金形式で受け取る場合は、公的年金の受給額を確認し、税と社会保険料の合計で、一時金受取と比べます。一時金の方が有利とも、年金の方が有利とも限りません。

失敗例4:受取の「年」を意識していなかった

ケース:Lさん(60歳)

結果(想定):退職金とiDeCoの受取が、同じ年ではなく別の年になった。その結果、「iDeCo先→退職金(9年内)」の調整が適用された。

対策:調整の対象かどうかは、受取日ではなく「受取の年(暦年)」で判定されます。12月と翌年1月でも年が分かれるため、退職金の支給時期を会社に確認し、iDeCoの受取時期を調整します。

失敗例5:税理士に相談せずに判断してしまった

ケース:Mさん(63歳)

結果(想定):旧ルールの情報(5年・10年など)をもとにしたため、実際の調整期間(4年内・9年内・19年内)と合わなかった。

対策:複数の退職金・DCがある場合は、個別の状況で結論が変わるため、受取の前に税理士などに確認することを推奨します。

まとめ:受取戦略設計の5ステップチェックリスト

iDeCoと退職金の受取方法を検討するときは、以下のステップで確認を進めましょう。

ステップ1:退職所得控除額を計算する
退職金とiDeCoそれぞれの勤続年数・加入期間から、退職所得控除額を算出します。勤続(加入)20年を境に計算式が変わります。
ステップ2:受取の組み合わせと対象期間を確認する
退職金→退職金は4年内、iDeCo等の一時金→退職金は9年内(2026年1月1日以後の受取分)、退職金→iDeCo等の一時金は19年内が調整の対象です。
ステップ3:重複期間と調整後の控除額を計算する
勤続期間と加入期間がどれだけ重なるかを整理し、調整後の控除額を計算します。計算結果が80万円未満なら80万円です。
ステップ4:受取の年と形式(一時金・年金・併用)を比べる
同じ年にまとめる、別の年に分ける、年金形式にするなど、複数のパターンで税額を試算します。年金形式は、公的年金との合計で税・社会保険料を確認します。
ステップ5:受取の前に専門家へ確認する
複雑なケース(転職複数回・企業型DC複数・退職金複数)は、受取の前に税理士やファイナンシャルプランナーに確認します。受け取った後では、やり直しができません。
最重要ポイントまとめ
✓ 2026年に延長されたのは「iDeCo等の一時金→退職金」の4年内→9年内です
✓ 「退職金→iDeCo等の一時金」は、以前から前年以前19年内が調整の対象です(10年空けても調整されます)
✓ 受取順序の有利・不利は、金額・加入期間・受取の年で変わります。一つの順序が常に有利とはいえません
✓ 調整の対象かどうかは、受取日ではなく受取の年(暦年)で判定されます
✓ 複雑なケースは、受取の前に専門家に確認する
補足:iDeCo制度の改正(2026年12月施行)
iDeCoの掛金の上限額が引き上げられます(2026年12月1日施行、2027年1月の掛金引落分から適用)。会社員・公務員で企業年金がない方は月2.3万円から月6.2万円、自営業者などは月6.8万円から月7.5万円になります(企業年金がある方は、企業年金と合わせて月6.2万円まで)。加入できる年齢も、65歳未満から70歳未満に広がります。受取時の退職所得控除は、加入期間が長いほど大きくなります。

受取順序による税額を試算してみませんか?

退職金の勤続年数・金額、iDeCoの加入期間・積立額を入力して、同じ年に受け取る場合・19年内・9年内・10年後の4パターンの税額を比較できます(iDeCoの加入期間は勤続期間に含まれる前提で計算します)。

シミュレーターを使ってみる →
📌 2026年11月4日の更新・訂正
①2026年の改正の説明を訂正しました。旧版は「5年ルールから10年ルールに延長され、退職金を先に受け取って10年後にiDeCoを受け取れば控除を満額使える」としていましたが、国税庁(No.2732)では、延長されたのは「iDeCo等の一時金を先に受け取り、その後に退職金を受け取る」場合の4年内→9年内だけです。「退職金を先に受け取り、その後にiDeCo等の一時金を受け取る」場合は、前年以前19年内が従来から調整の対象で、10年空けても調整されます。②調整後の控除額の計算式を、国税庁の定め(今回の控除額−重複期間分の控除額)に直しました。③すべての試算を、この定めに沿って再計算しました。旧版の「パターンA(退職金先行)が最有利」「最大300万円の節税」などの結論は誤りでした。「年収別」の見出しも、退職所得は年収と関係なく分離課税で計算するため、退職金額別に改めました。④転職者のケース(Hさん)の「退職金も35年分の控除で課税ゼロ」は誤りで、C社の勤続15年分の控除(600万円)で計算するよう訂正しました。⑤失敗例の数値と、根拠を示せない記述を直しました。⑥シミュレーターのリンク先を、記事の内容に合う「退職金・iDeCo税制シミュレーター」に変更しました。タイトルも、内容に合わせて改めました。
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⚠️ 免責事項

本記事は2026年11月時点の税制に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な税務相談・投資助言を行うものではありません。

シミュレーション結果は、加入期間が勤続期間に含まれる前提などを置いた概算です。実際の税額は個人の所得状況・控除適用状況・受取の時期により異なります。正確な税額計算や受取戦略の判断は、受取の前に税理士等の専門家にご相談ください。

税制は改正される可能性があります。最新情報は国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/)をご確認ください。

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