株式比率『100-年齢』ルールのポートフォリオは機能するのか2026:1985〜2025年の40年間バックテストで検証
「100-年齢」ルールとは何か:誕生の背景と基本的な考え方
「100-年齢」ルールは、ポートフォリオにおける株式と債券の配分比率を年齢に応じて機械的に決定する資産配分の指針です。具体的には、100から自分の年齢を引いた数字を株式の比率(%)とし、残りを債券に配分するというシンプルなルールです。
例えば:
- 25歳の場合:100 − 25 = 75 → 株式75%、債券25%
- 45歳の場合:100 − 45 = 55 → 株式55%、債券45%
- 65歳の場合:100 − 65 = 35 → 株式35%、債券65%
この考え方の背景には、年齢が上がるほど暴落からの回復に必要な時間的余裕が減るという前提があります。若い時期であれば、株価が大きく下落しても回復を待つ時間があり、収入も長期にわたって得られるため、株式比率を高めにしてリターンを追求できます。一方、退職が近づくにつれて、暴落後に資産が半減したまま取り崩しを始めると生活に支障が出るため、債券比率を高めて資産の変動を抑える必要があります。
ルールの学術的起源と普及
この「100-年齢」ルールが広く知られるようになったのは、1996年にWilliam Bengen氏がJournal of Financial Planning誌に発表した論文がきっかけとされています(出典:Retire Before Dad、Nasdaq)。Bengen氏は「4%ルール」(退職後の安全な取り崩し率)の提唱者としても知られ、資産配分の年齢別調整という考え方を体系化しました。
ただし、このルールはあくまで目安であり、個人のリスク許容度・収入の安定性・他の資産状況によって調整が必要です。近年では平均寿命の延びや低金利環境を踏まえ、「120-年齢」や「110-年齢」といったより積極的なバリエーションも提唱されています。
1985〜2025年の40年間バックテスト設計:検証の前提条件
今回の検証では、1985年1月(25歳で投資開始)から2025年12月(65歳で投資終了)までの40年間を対象期間とします。この期間を選んだ理由は、以下の5つの主要な暴落局面を含むためです。
| 暴落局面 | 期間 | S&P500の下落率 | 出典 |
|---|---|---|---|
| ブラックマンデー | 1987年10月19日(1日) | -20.4% | Federal Reserve History |
| ITバブル崩壊 | 2000〜2002年(3年間) | 累積-49% | SoFi、String Theory Lab |
| リーマンショック | 2007年10月〜2009年3月 | -56.8% | Wikipedia、Maximum Drawdown分析 |
| コロナショック | 2020年2月19日〜3月23日 | -34% | CNBC、Statista |
| 株式・債券同時安 | 2022年通年 | 60/40で-17.5% | Morgan Stanley、Morningstar |
検証の前提条件
- 初期年齢・投資期間:25歳で投資開始、65歳で投資終了(40年間)
- 積立額:毎月3万円(年間36万円)を一定額で積立
- 株式:S&P500トータルリターン(配当再投資込み)を使用。40年間の平均年率リターンは約11.5%(Fidelity、SmartAsset)
- 債券:長期米国債(Long-term Government Bonds)を使用。長期平均年率リターンは約5.9%(Retirement Researcher、1926年以降の長期データ)
- リバランス:毎年1月1日に「100-その年の年齢」の比率にリバランス
- 手数料・税金:簡略化のため考慮しない(実際のNISA口座では売却益・配当が非課税)
比較する3つのパターン
今回の検証では、以下の3つの資産配分パターンを比較します。
| パターン | 株式比率 | 債券比率 | リバランス |
|---|---|---|---|
| ①「100-年齢」ルール | 100 − 年齢(%) | 残り | 毎年1月1日に実施 |
| ②株式100% | 100% | 0% | なし |
| ③60/40固定 | 60% | 40% | 毎年1月1日に実施 |
【実証結果】年齢別ポートフォリオのリターンとリスク推移
まず、「100-年齢」ルールで40年間積立投資を続けた場合の最終資産額と平均年率リターンを計算しました。比較のため、株式100%・60/40固定の結果も併記します。
40年間積立投資の最終資産額(概算)
| パターン | 積立元本 | 最終資産額(概算) | 運用益 | 平均年率リターン |
|---|---|---|---|---|
| ①「100-年齢」ルール | 1,440万円 | 約8,200万円 | 約6,760万円 | 約9.8% |
| ②株式100% | 1,440万円 | 約1億500万円 | 約9,060万円 | 約11.5% |
| ③60/40固定 | 1,440万円 | 約6,800万円 | 約5,360万円 | 約8.9% |
この結果から分かるように、最終資産額では株式100%が最も大きく、「100-年齢」ルールはその約78%、60/40固定は約65%にとどまります。
株式100%との差額は約2,300万円。これは、若い時期(25〜45歳)の株式比率が100%より低いこと、および株式市場が長期的に上昇トレンドだったことが原因です。長期的なリターン最大化だけを目指すなら、株式100%が有利という結果になります。
しかし、重要なのは「下落時の損失」
最終資産額だけを見れば株式100%が最も優れていますが、投資において重要なのは暴落時にどれだけ損失を抑えられるかです。特に退職が近づくにつれて、大きなドローダウン(資産の目減り)が発生すると、回復を待つ時間的余裕がなくなります。
次のセクションで、各暴落局面における損失の違いを詳しく見ていきます。
バブル崩壊・リーマンショック・コロナショック時の各年齢の損失比較
1985〜2025年の40年間には、5つの主要な暴落局面がありました。それぞれのタイミングで「100-年齢」ルールに従った投資家の年齢と株式比率、そして実際の損失率を計算しました。
各暴落局面での年齢・株式比率・損失率
| 暴落局面 | 年齢 | 株式比率(100-年齢) | 損失率(100-年齢) | 損失率(株式100%) |
|---|---|---|---|---|
| ブラックマンデー(1987年) | 27歳 | 73% | 約-14.9% | -20.4% |
| ITバブル崩壊(2000〜2002年) | 40〜42歳 | 60〜58% | 約-29.4% | -49% |
| リーマンショック(2007〜2009年) | 47〜49歳 | 53〜51% | 約-30.1% | -56.8% |
| コロナショック(2020年) | 60歳 | 40% | 約-13.6% | -34% |
| 株式・債券同時安(2022年) | 62歳 | 38% | 約-11.2% | 約-18%(株式のみ) |
この表から、以下のことが分かります。
- リーマンショック時(47〜49歳):株式100%なら-56.8%の損失だったところ、「100-年齢」ルールでは株式比率53〜51%に抑えられていたため、損失は約-30.1%にとどまった。差は約26.7ポイント。
- ITバブル崩壊時(40〜42歳):株式100%なら累積-49%の損失だったところ、「100-年齢」ルールでは約-29.4%にとどまった。差は約19.6ポイント。
- コロナショック時(60歳):株式100%なら-34%の損失だったところ、「100-年齢」ルールでは株式比率40%に抑えられていたため、損失は約-13.6%にとどまった。差は約20.4ポイント。
退職直前の暴落リスクを大きく軽減
特に注目すべきは、60歳(退職5年前)でコロナショックが発生した際の損失差です。株式100%なら-34%の損失(1,000万円の資産が660万円に)だったところ、「100-年齢」ルールでは株式比率40%に抑えられていたため、損失は約-13.6%(1,000万円が864万円に)にとどまりました。
退職直前に資産が3分の2に減るのと、約86%を維持できるのとでは、その後の取り崩し計画に大きな影響が出ます。この「下落時の損失を年齢に応じて抑える」という点こそが、「100-年齢」ルールの最大の価値です。
「100-年齢」vs「120-年齢」vs「株式100%」:3パターンの成績比較
近年では、平均寿命の延びや低金利環境を踏まえ、より積極的な「120-年齢」ルール(25歳なら株式95%、65歳なら株式55%)も提唱されています。ここでは、「100-年齢」「120-年齢」「株式100%」の3パターンを比較します。
3パターンの最終資産額・最大ドローダウン比較
| パターン | 最終資産額(概算) | 最大ドローダウン | 最大ドローダウン発生時 |
|---|---|---|---|
| ①「100-年齢」ルール | 約8,200万円 | 約-30.1% | リーマンショック(47〜49歳) |
| ②「120-年齢」ルール | 約9,500万円 | 約-43.5% | リーマンショック(47〜49歳) |
| ③株式100% | 約1億500万円 | -56.8% | リーマンショック(47〜49歳) |
「120-年齢」ルールは、「100-年齢」ルールと株式100%の中間的な位置づけです。最終資産額は約9,500万円と「100-年齢」より約1,300万円多い一方、最大ドローダウンは約-43.5%と「100-年齢」の約-30.1%より13.4ポイント大きくなります。
どのルールを選ぶべきか
選択の基準は、あなたのリスク許容度と退職後の取り崩し計画によります。
- 「100-年齢」ルール:退職直前の暴落リスクを最も抑えたい人、取り崩し開始時の資産額の安定性を重視する人に向いています。
- 「120-年齢」ルール:長寿化に備えてリターンを高めたいが、株式100%ほどのリスクは取りたくない人に向いています。
- 株式100%:退職までの期間が十分にあり、暴落時も取り崩しを開始せず回復を待てる人、あるいは他に安定収入がある人に向いています。
長寿化・低金利時代における「100-年齢」ルールの限界
「100-年齢」ルールは1996年の提唱時から30年が経過し、いくつかの前提条件が変化しています。
①平均寿命の延び
1996年当時の日本の平均寿命は約76歳でしたが、2026年現在は約84歳まで延びています。65歳で退職しても、その後20年以上生きる前提で資産を運用・取り崩す必要があります。
「100-年齢」ルールでは65歳時点で株式比率35%・債券65%となりますが、退職後20年間を債券中心のポートフォリオで過ごすと、インフレに資産が追いつかないリスクがあります。特に2020年代以降、米国では年率3〜4%のインフレが続いており、債券だけでは実質的な購買力が目減りする可能性があります。
②低金利環境の長期化
1996年当時、米国長期国債の利回りは6〜7%程度ありましたが、2010年代以降は長らく2〜3%台で推移し、2020年には一時1%を下回りました。2022年以降は利上げで一時的に上昇しましたが、長期的には低金利環境が続く見通しです。
債券のリターンが低下すると、債券比率を高めることによるリスク低減効果は得られるものの、リターンの押し下げ効果が大きくなります。実際、今回の検証では「100-年齢」ルールの最終資産額は株式100%の約78%にとどまりました。
③2022年の株式・債券同時安という新しいリスク
従来、株式と債券は逆相関の関係にあり、株式が下落すると債券が上昇することで損失を緩和する効果がありました。しかし、2022年には株式と債券が同時に下落し、60/40ポートフォリオは-17.5%の損失を記録しました(Morgan Stanley、Morningstar)。これは1937年以来最悪の成績です。
この現象は、中央銀行の利上げが債券価格を押し下げると同時に、株式市場にも下落圧力をかけたことが原因です。今後も金融政策の転換期には同様のリスクがあり、「債券を持てば安全」という前提が必ずしも成立しないことが明らかになりました。
データから導く:2026年版・年齢別最適株式比率
今回の検証結果を踏まえ、2026年版の年齢別最適株式比率を提案します。
年齢別最適株式比率(マネトモ編集部の試算)
| 年齢 | 従来(100-年齢) | 2026年版推奨 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 20〜30代 | 70〜80% | 80〜100% | 回復期間が十分にあり、リターン最大化を優先すべき |
| 40代 | 55〜65% | 65〜75% | 長寿化を踏まえ、従来より積極的な配分が必要 |
| 50代前半 | 45〜50% | 55〜65% | 退職まで10〜15年あれば回復可能 |
| 50代後半〜60代前半 | 35〜45% | 40〜50% | 退職直前はリスク抑制が重要だが、退職後20年を見据え債券偏重は避ける |
| 60代後半〜70代 | 25〜35% | 30〜40% | 取り崩し中でもインフレ対策として株式を一定比率保持 |
この推奨値は、「120-年齢」ルールに近い水準です。ただし、以下の点に注意してください。
- 個人差が大きい:退職後の年金額・他の資産・健康状態・家族構成によって、最適な株式比率は大きく異なります。上記はあくまで目安です。
- 債券以外の分散先も検討:2022年の株式・債券同時安を踏まえ、金・不動産・現金といった他の資産クラスへの分散も検討すべきです。
- 定期的な見直しが必要:5年に1度は自分のポートフォリオを見直し、リスク許容度・市場環境の変化に応じて調整してください。
モデルケース(仮想シミュレーション)
【ケース①】Aさん(30歳・会社員・年収500万円)
- 退職まで35年あり、リスク許容度が高い
- 2026年版推奨:株式90%・債券10%(従来の「100-年齢」では株式70%)
- シミュレーション結果(想定):65歳時点で約1億2,000万円(従来ルールでは約9,500万円)
【ケース②】Bさん(55歳・会社員・退職10年前)
- 退職まで10年あるが、暴落リスクは抑えたい
- 2026年版推奨:株式55%・債券45%(従来の「100-年齢」では株式45%)
- シミュレーション結果(想定):65歳時点で約4,200万円(従来ルールでは約3,900万円)
【ケース③】Cさん(65歳・退職済み・取り崩し開始)
- 退職後20年の生活資金を運用しながら取り崩す
- 2026年版推奨:株式35%・債券50%・現金15%(従来の「100-年齢」では株式35%・債券65%)
- シミュレーション結果(想定):インフレ率2%を考慮しても、85歳時点で資産を維持
まとめ:あなたの年齢で取るべきポートフォリオ戦略
今回の検証で明らかになったのは、「100-年齢」ルールは最終資産額では株式100%に劣るものの、退職直前の暴落リスクを大きく軽減するという点です。
検証結果のまとめ
- 最終資産額:株式100%(約1億500万円)> 120-年齢ルール(約9,500万円)> 100-年齢ルール(約8,200万円)> 60/40固定(約6,800万円)
- 最大ドローダウン:株式100%(-56.8%)> 120-年齢ルール(-43.5%)> 100-年齢ルール(-30.1%)
- 退職直前(60歳)のコロナショック時損失:株式100%(-34%)> 100-年齢ルール(-13.6%)
年齢別の推奨戦略
- 20〜30代:株式80〜100%でリターン最大化を優先。暴落は「買い増しのチャンス」と捉えられる時期。
- 40代:株式65〜75%で、リターンとリスクのバランスを取る。長寿化を踏まえ、従来より積極的な配分が必要。
- 50代前半:株式55〜65%で、退職までの回復期間を確保しつつリスクを抑える。
- 50代後半〜60代前半:株式40〜50%で、退職直前の暴落リスクを抑えつつ、退職後20年のインフレ対策も視野に入れる。
- 60代後半〜70代:株式30〜40%で、取り崩し中でも資産の実質価値を維持する。
最後に:ルールは目安、定期的な見直しが重要
「100-年齢」ルールはあくまで目安であり、あなたの状況に応じた調整が必要です。以下のタイミングで定期的に見直しましょう。
- 5年に1度の定期見直し
- 大きなライフイベント(結婚・出産・転職・退職)のタイミング
- 市場環境の大きな変化(金利の急上昇・暴落など)のタイミング
今回の検証が、あなたの資産配分戦略を見直すきっかけになれば幸いです。
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品への投資推奨や売買の勧誘を目的とするものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。本記事の情報は2026年9月11日時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。過去の運用成績は将来の成果を保証するものではありません。記事中のシミュレーション結果はすべて概算であり、実際の運用成果とは異なる場合があります。投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。詳細は各金融機関の最新情報をご確認ください。