金融工学の基礎

FOMC・日銀会合ダブル控え2026:金利が上がると株式・債券・不動産・暗号資産・コモディティは論理的にどう動くのか、5資産クラスの伝達メカニズム総整理

📅 公開日:2026年9月16日 ⏱️ 読了目安:15分 🏷️ カテゴリ:金融工学の基礎
2026年9月、異例の事態が起きています。米国FOMC(9月15〜16日)と日本銀行の金融政策決定会合(9月17〜18日)が同一週に重なり、双方とも利上げの確率が高い状況です。CME FedWatchツールでは0.25%利上げの織り込みが約66〜92%、日銀も1.00%から1.25%への引き上げが市場予想の80〜90%。実際、米国10年債利回りは2023年以来となる5%超に到達し、9月14日のNY市場では3指数揃って下落しました。

しかし、「金利が上がると資産価格が下がる」という単純な理解では不十分です。株式は割引率上昇でバリュエーションが圧縮される一方、銀行株は利ざや拡大で恩恵を受ける。債券はデュレーションが長いほど価格下落が大きい。不動産はREIT利回りスプレッド縮小で売られる。暗号資産は機会費用増加で資金流出圧力がかかる。コモディティはドル高圧力とインフレヘッジ需要が綱引きする。

この記事では、株式・債券・不動産・暗号資産・コモディティの5資産クラスそれぞれに金利上昇がどのような経路で伝わるのかを、理論的メカニズムと実データで整理します。個別の売買推奨ではなく、因果関係の理解に徹した内容です。

1. 2026年9月「ダブル会合」の異例性と市場の反応

FOMCと日銀会合が同一週に重なる稀なタイミング

2026年9月15〜16日、米国連邦準備制度理事会(FRB)のFOMC(連邦公開市場委員会)が開催されます。金利決定は9月16日午後2時(米国東部時間)に発表される予定です。その翌日から、日本銀行の金融政策決定会合が9月17〜18日に開催されます。

通常、FOMCと日銀会合は日程が重ならないことが多いですが、今回は1週間以内に世界第1位と第3位の経済大国の中央銀行が金利を決定するという異例の状況です。しかも、双方とも利上げの確率が高いと市場は見ています。

市場の織り込み状況:利上げ確率は66〜92%

CME FedWatchツール(先物市場のデータから算出される金利予測ツール)によると、9月FOMCでの0.25%利上げ確率は約66〜92%と報じられています(情報源により変動)。Forbes、Yahoo Financeなど複数メディアがこの数字を報道しており、市場のコンセンサスは「利上げ実施」で固まりつつあります。

一方、日本では日銀が政策金利を1.00%から1.25%へ0.25%引き上げるとの予想が市場の80〜90%を占めています。日本経済新聞などが報じた通り、9月17〜18日の会合での利上げがほぼ確実視されています。

米国10年債利回りは5%超、2023年以来の高水準

金利上昇の影響は、すでに債券市場に現れています。2026年9月15日、米国10年債利回りは5.01〜5.02%に到達しました。これは2023年10月以来、約3年ぶりの高水準です(財経新聞などが報道)。

10年債利回りは、あらゆる資産の「基準金利」として機能します。住宅ローン金利、企業の借入コスト、株式のバリュエーション(後述するDCFモデルの割引率)など、幅広い分野に影響を及ぼすため、この5%超という水準は投資家にとって大きな意味を持ちます。

9月14日のNY市場:3指数揃って下落

FOMC開催直前の2026年9月14日、NY株式市場は3指数揃って下落しました。

指数 終値 前日比(ドル) 前日比(%)
NYダウ 52,093.11 ▼328.09 ▼0.63%
ナスダック 25,981.57 ▼0.78%
S&P500 7,585.73 ▼0.45%

📊 出典:TheStreet、CNBC、STL.News(2026年9月14日終値)

特にナスダックの下落率が大きい(▼0.78%)ことから、金利上昇の影響をグロース株(成長株)が強く受けていることが読み取れます。この背景には、割引現在価値モデル(DCF)における割引率上昇が関係しています。次章で詳しく見ていきましょう。

2. 金利上昇の伝達メカニズム①:株式(割引現在価値とセクター格差)

DCFモデル:金利上昇=割引率上昇で株価は理論的に下がる

株式の理論価格を算出する代表的な手法に、DCF(Discounted Cash Flow、割引現在価値)モデルがあります。これは「将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて合計したものが株価である」という考え方です。

数式で表すと次のようになります:

株価 = CF₁ / (1+r) + CF₂ / (1+r)² + CF₃ / (1+r)³ + …
(CFₙ:n年後のキャッシュフロー、r:割引率)

ここで重要なのは割引率 rです。割引率は「無リスク金利(国債利回り)+リスクプレミアム」で決まります。金利が上昇すると、この割引率も上昇し、将来のキャッシュフローの現在価値が減少します。

特にグロース株(成長株)は、現在の利益が小さく将来の利益比重が高いため、割引率上昇の影響を強く受けます。Financial Modeling Prep、Bitget、Traders Agencyなどの分析によれば、金利上昇局面ではグロース株のPER(株価収益率)が圧縮されやすいことが理論的に示されています。

セクターによる影響の違い:銀行株は金利上昇で追い風

一方で、すべての株式が金利上昇で下がるわけではありません。金融セクター、特に銀行株は、金利上昇で恩恵を受けるケースがあります。

銀行の収益源の一つに純金利マージン(NIM:Net Interest Margin)があります。これは「貸出金利と預金金利の差」を示す指標で、金利が上昇すると貸出金利の方が早く・大きく上がるため、NIMが拡大し銀行の収益が増加します。

実際、セントルイス連銀やカンザスシティ連銀のデータによれば、2024〜2025年を通じて米国銀行のNIMは上昇を続けています。Seoul Economic Dailyも同様の分析を報じており、金利上昇局面では銀行株がアウトパフォームする傾向があることが確認されています。

グロース株 vs バリュー株:金利感応度の違い

分類 金利上昇時の影響 理由
グロース株(成長株) 下落圧力大 将来利益比重が高く、割引率上昇でPER圧縮
バリュー株(割安株) 相対的に下落小 現在利益比重が高く、割引率の影響小
金融株(銀行等) 上昇余地あり NIM拡大で収益増加

このように、株式市場は金利上昇に対して一枚岩ではなく、セクターごとに異なる反応を示すことを理解しておく必要があります。

3. 金利上昇の伝達メカニズム②:債券(デュレーションリスクと価格逆相関)

債券価格と金利は逆相関:なぜ金利が上がると債券が売られるのか

債券投資の基本原則は「金利が上がると既発債の価格は下がる」です。これは裁定(アービトラージ)の論理から導かれます。

例えば、あなたが額面100万円・利率2%・10年満期の国債を保有しているとします。年間2万円の利息が受け取れます。ところが、新規発行される国債の利率が3%に上昇したとします。同じ100万円で買えば年間3万円の利息が得られるため、あなたの2%国債は魅力が下がり、売却しようとすると額面100万円より安い価格でしか買い手がつきません。

この価格調整メカニズムにより、金利上昇=既発債価格下落という逆相関が成立します。

デュレーション:金利感応度を測る指標

債券の金利感応度を測る指標にデュレーション(Duration)があります。デュレーションは「債券のキャッシュフロー(利払い+償還金)の加重平均受取年数」を示す指標で、単位は「年」です。

デュレーションが大きいほど、金利変動に対する価格変動も大きくなります。Fidelity、Raymond James、FINRAなどの金融教育機関が提供する理論値では、次のような近似が使われます:

債券価格変動率(%) ≒ − デュレーション × 金利変動(%)

例えば、デュレーション5年の債券で金利が1%上昇した場合、価格は約5%下落します。デュレーション10年なら約10%下落します。

具体例:デュレーション別の価格変動シミュレーション

デュレーション 金利1%上昇時の価格下落率 100万円保有時の評価損
2年 ▼約2% ▼約2万円
5年 ▼約5% ▼約5万円
10年 ▼約10% ▼約10万円
20年 ▼約20% ▼約20万円

⚠️ このシミュレーションは理論値(修正デュレーション近似)であり、実際の市場価格は需給・信用リスク・流動性などの要因でも変動します。

2026年9月時点で米国10年債利回りが5%超に達したことは、既発の低利回り債券を保有している投資家にとって大きな評価損リスクとなっています。特に長期債(デュレーションが長い債券)を保有している場合、金利上昇局面では慎重な判断が求められます。

4. 金利上昇の伝達メカニズム③:不動産(収益還元法とREIT利回りスプレッド)

不動産評価の基本:収益還元法とキャップレート

不動産投資では、物件の価値を収益還元法で算出することが一般的です。これは「年間純収益をキャップレート(期待利回り)で割った値が物件価格である」という考え方です。

物件価格 = 年間純収益 ÷ キャップレート

例えば、年間純収益500万円の物件を、キャップレート5%で評価する場合、物件価格は「500万円 ÷ 0.05 = 1億円」となります。

ここで重要なのは、金利が上昇するとキャップレート(期待利回り)も上昇する傾向があるという点です。投資家は「無リスク金利(国債利回り)+リスクプレミアム」でキャップレートを決定するため、国債利回りが上がればキャップレートも上がり、結果として物件価格は下がります。

REIT利回りスプレッド縮小による売り圧力

REIT(不動産投資信託)は、上場しているため株式と同様に市場で売買されます。REITの魅力を測る指標の一つに利回りスプレッドがあります。これは「REIT利回り − 国債利回り」で計算され、REITが国債に比べてどれだけ高い利回りを提供しているかを示します。

金利が上昇して国債利回りが上がると、このスプレッドが縮小し、REITの相対的な投資妙味が低下します。結果として、REITが売られる圧力が高まります。

実際、Nareit(全米不動産投資信託協会)のデータによれば、2026年第1四半期時点でREITの実質キャップレートは5.89%、一方で私募不動産評価のキャップレートは4.44%と、1.45%の乖離が継続しています。この乖離は、公募REIT(市場で取引される)が金利上昇の影響を既に織り込んでいる一方、私募不動産(市場外で評価される)の価格調整が遅れていることを示しています。

住宅ローン金利上昇による需要減退

金利上昇は、住宅ローン金利の上昇にも直結します。これにより住宅購入者の支払い能力が低下し、住宅需要が減退します。需要減退は不動産価格の下落圧力となり、不動産市場全体に影響を及ぼします。

5. 金利上昇の伝達メカニズム④:暗号資産(機会費用増加による資金流出)

無リスク金利上昇=リスク資産の機会費用増加

暗号資産(ビットコイン、イーサリアム等)は、利息や配当を生まない無配当資産です。一方、米国債は「無リスク金利」を提供します。金利が上昇すると、米国債を保有するだけで得られるリターンが増えるため、暗号資産を保有する機会費用が増加します。

機会費用とは「ある選択をすることで失われる、次善の選択肢から得られたであろう利益」を指します。例えば、米国10年債利回りが2%のとき、ビットコインを保有する機会費用は年率2%です。しかし利回りが5%に上昇すると、機会費用は年率5%に跳ね上がります。

この機会費用増加は、リスク資産である暗号資産からの資金流出圧力となります。

2026年9月時点の実例:利上げ確率上昇がビットコインを下押し

2026年9月時点で、米国の利上げ確率上昇(8月CPI(消費者物価指数)のコア指数上振れで次回FOMC利上げ確率が87%から92%へ上昇)が、ビットコイン相場の下押し要因として実際に作用しています。

暗号資産市場は、従来「インフレヘッジ」として注目されることもありましたが、金利上昇局面では機会費用増加によるリスクオフ(リスク資産からの資金逃避)の影響が強く出る傾向があります。

暗号資産特有のリスク要因

これらのリスクに加えて、金利上昇による機会費用増加が重なると、暗号資産は他の資産クラス以上に売り圧力を受けやすくなります。

6. 金利上昇の伝達メカニズム⑤:コモディティ(ドル高圧力とインフレヘッジの綱引き)

金利上昇→ドル高→ドル建て商品の割高感

コモディティ(金、原油、銅などの商品)の多くはドル建てで取引されます。米国の金利が上昇すると、ドルの魅力が増し、為替市場でドル高が進む傾向があります。

ドル高になると、ドル建てで価格が表示されるコモディティは、他通貨から見て割高になります。結果として、需要が減少し価格が下落する圧力がかかります。

供給要因と金利要因の綱引き:原油の実例

ただし、コモディティ価格は金利だけで決まるわけではありません。供給要因(産油国の生産調整、地政学リスク等)も大きく影響します。

2026年9月時点で、サウジアラビアの主要パイプラインが停止したことにより、WTI原油価格が下支えされています。これは「金利上昇→ドル高→原油下落」という理論的な下落圧力と、「供給減少→価格上昇」という供給要因が綱引きしている状態です。

金(ゴールド)の特殊性:インフレヘッジと金利要因の相反

金は伝統的にインフレヘッジ資産として需要があります。インフレ率が高まると、通貨の実質価値が下がるため、実物資産である金に資金が流入します。

一方で、金も無配当資産であるため、金利上昇による機会費用増加の影響を受けます。このため、金価格は次の2つの要因が綱引きします:

このため、金価格の動きは他のコモディティ以上に複雑で、金利上昇局面でも単純には下がらないケースがあります。

7. モデルケースで見る5資産クラスの金利感応度シミュレーション(仮想)

⚠️ 以下のケースはすべて仮想の人物設定によるシミュレーションです。実在の人物・事例ではありません。数値は概算であり、実際の運用成果を保証するものではありません。

仮想投資家Aさんのポートフォリオ

40代・会社員・金融資産2,000万円を以下のように分散投資しているとします。

資産クラス 投資額 構成比
株式(米国グロース株ETF) 600万円 30%
債券(米国10年債ETF、デュレーション約8年) 400万円 20%
不動産(J-REIT) 400万円 20%
暗号資産(ビットコイン) 200万円 10%
コモディティ(金ETF) 200万円 10%
現金 200万円 10%

シナリオ:米国10年債利回りが5%→6%へ1%上昇した場合の影響試算

以下は理論値・過去のボラティリティに基づく試算であり、実際の市場では需給・地政学リスク等で大きく変動する可能性があります。

資産クラス 想定価格変動率 投資額 評価損益
株式(グロース株) ▼8% 600万円 ▼48万円
債券(デュレーション8年) ▼8% 400万円 ▼32万円
不動産(J-REIT) ▼5% 400万円 ▼20万円
暗号資産(ビットコイン) ▼15% 200万円 ▼30万円
コモディティ(金) ▼3% 200万円 ▼6万円
現金 0% 200万円 0円
合計 2,000万円 ▼136万円

📊 このシミュレーションは理論値に基づく試算であり、実際の市場では需給・信用リスク・流動性・地政学リスク等の要因で大きく変動します。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。

シミュレーション結果(想定)から読み取れること

このように、金利上昇の影響は資産クラスごとに大きく異なります。単純に「金利が上がったからすべて売る」「すべて現金にする」という判断ではなく、各資産の伝達メカニズムを理解した上で、自分のリスク許容度・投資期間に合わせた判断が求められます。

8. まとめ:伝達経路を理解すれば、単純な「金利↑=資産↓」の誤解から脱却できる

5資産クラスの金利伝達メカニズム総括

資産クラス 主な伝達経路 金利上昇時の影響
株式 割引現在価値(DCF)モデル グロース株は下落、金融株は上昇余地
債券 デュレーションリスク 長期債ほど価格下落大
不動産 収益還元法・REITスプレッド キャップレート上昇で価格下落
暗号資産 機会費用増加 リスクオフで下落圧力大
コモディティ ドル高圧力 vs インフレヘッジ 供給要因と綱引き、複雑

理論的理解がもたらす3つのメリット

  1. 過剰な不安からの脱却:「金利が上がったからすべて売らなければ」という感情的判断を避けられる
  2. 資産ごとの特性に応じた対応:デュレーションが短い債券への乗り換え、金融株へのシフトなど、理論に基づく選択肢が見える
  3. 長期視点の維持:金利上昇は一時的なボラティリティを生むが、ファンダメンタルズ(企業の収益力等)が健全であれば、長期では回復する可能性も理解できる

2026年9月のダブル会合後、個人投資家が取るべきスタンス

FOMC(9月15〜16日)と日銀会合(9月17〜18日)が終了した後、金利動向は一定の落ち着きを見せる可能性もあれば、さらなる追加利上げの観測が出る可能性もあります。

いずれにせよ、この記事で整理した5資産クラスの伝達メカニズムは普遍的な理論です。今回のダブル会合に限らず、今後の金利変動局面でも応用できる知識として、ぜひ頭の片隅に置いておいてください。

最後に改めて強調しますが、この記事は個別の投資助言ではありません。「この資産を買うべき」「今売るべき」といった判断は、ご自身のリスク許容度・投資期間・ライフプランに基づいて行ってください。

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免責事項
本記事は金融知識の教育を目的としており、特定の金融商品・銘柄の推奨や投資助言を行うものではありません。記載された数値・シミュレーションは理論値・過去のデータに基づく試算であり、将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。税務・法務に関する具体的なアドバイスが必要な場合は、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。暗号資産は価格変動リスク・規制リスク・流動性リスクが高く、元本を大きく割り込む可能性があります。コモディティ投資は為替変動・地政学リスクの影響を受けます。