資産形成・積立術

貯蓄ゼロ世帯はなぜ高止まりしているのか2026:年代別『今やるべきこと』ロードマップと処方箋

📅 公開日:2026年10月1日 📝 文字数:約6,000字 ⏱ 読了時間:約12分
単身世帯の30.1%、二人以上世帯の15.7%——これは2025年時点で「金融資産を保有していない」と回答した世帯の割合です(金融経済教育推進機構 家計の金融行動に関する世論調査)。実質賃金が7か月連続プラスに転じ、非正規雇用比率もわずかに改善する一方で、貯蓄ゼロ世帯は、単身世帯で3割前後(二人以上世帯は15.7%)と、なお高い水準にあります。この記事では、この水準の背景にある混在した実態を整理し、20代から60代以降まで、年代別のライフステージに即した『今やるべきこと』を、最新の制度改正と公的データを基に具体的に提示します。
📖 目次
  1. 貯蓄ゼロ世帯の定義と最新データ(2025年調査)
  2. なぜ「高止まり」しているのか——混在する改善と悪化
  3. 年代別『今やるべきこと』ロードマップ
    1. 20代:奨学金返済と並行して始める少額投資
    2. 30代:教育費・住宅ローンとiDeCo改正(2026年12月)の活用
    3. 40代:住宅ローン残債と老後資金形成の両立
    4. 50代:退職金・年金繰り下げ・在職老齢年金改正の戦略
    5. 60代以降:公的セーフティネットと取り崩し計画
  4. まとめ:データ×制度×実行可能な小さな一歩

貯蓄ゼロ世帯の定義と最新データ(2025年調査)

「貯蓄ゼロ」の本当の意味

まず押さえておくべきは、調査における「金融資産非保有」の定義です。これは「日常的な出し入れに使う預貯金を除いた金融資産」を保有していない状態を指します。銀行口座の残高が文字通りゼロという意味ではありません。たとえば生活費として数万円の普通預金があっても、定期預金・投資信託・株式・個人向け国債などの「運用目的の金融資産」を持っていなければ、この調査では「金融資産非保有世帯」に分類されます。

⚠️ 注意:この調査は2018年に設問が大幅に変更されたため、それ以前との経年比較は調査実施側も不適切としています。本記事では2025年単年の水準と、直近数年の高止まり傾向のみを扱います。

最新の金融資産非保有割合(2025年調査)

金融経済教育推進機構(J-FLEC、旧・金融広報中央委員会)が2025年12月18日に公表した『家計の金融行動に関する世論調査(2025年)』によると、金融資産を保有していない世帯の割合は以下の通りです。

世帯区分 金融資産非保有割合
単身世帯全体 30.1%
二人以上世帯全体 15.7%

単身世帯では約3世帯に1世帯が、二人以上世帯では約6世帯に1世帯が、運用目的の金融資産を持っていないという状況です。

年代別の内訳

さらに年代別に見ると、貯蓄ゼロ割合にはライフステージごとの特徴が浮かび上がります。

年代 単身世帯 二人以上世帯
20代 33.2% 21.6%
30代 32.3% 17.6%
40代 32.1% 18.8%
50代 35.2% 18.2%
60代 30.4% 12.8%

単身世帯では20代から50代まで一貫して3割前後が貯蓄ゼロであり、特に50代が35.2%と最も高い水準です。二人以上世帯では20代が21.6%と最も高く、年代が上がるにつれて低下する傾向が見られます。

金融資産保有額の平均値と中央値

一方、金融資産を保有している世帯も含めた全体の保有額(非保有世帯を含む平均値・中央値)は以下の通りです。

年代 単身世帯(平均/中央値) 二人以上世帯(平均/中央値)
20代 255万円 / 37万円 525万円 / 125万円
30代 501万円 / 100万円 1,096万円 / 311万円
40代 859万円 / 100万円 1,486万円 / 500万円
50代 999万円 / 120万円 1,908万円 / 700万円
60代 1,364万円 / 300万円 2,683万円 / 1,400万円

二人以上世帯の全体平均は1,940万円、中央値は720万円で、調査開始来最高を記録しています。つまり、資産を持つ層と持たない層の二極化が進んでいる可能性が示唆されます。

なぜ「高止まり」しているのか——混在する改善と悪化

実質賃金や非正規雇用比率など、一部の経済指標は改善傾向にあります。それでもなお、貯蓄ゼロ世帯の割合が高い水準で推移している背景には、改善している指標と依然高い/悪化している指標が混在している実態があります。

改善している指標

依然高い/悪化している指標

つまり、賃金・雇用環境は上向きつつあるが、教育費負担や過去の物価上昇で削られた貯蓄余力の回復には時間がかかるため、貯蓄ゼロ割合は高い水準で高止まりしているという整合的な説明ができます。

年代別『今やるべきこと』ロードマップ

ここからは、年代別のライフステージ特有の制約条件を踏まえ、最新の制度改正と公的データを基に、『今やるべきこと』の優先順位を具体的に提示します。

20代:奨学金返済と並行して始める少額投資

20代の単身世帯では33.2%、二人以上世帯では21.6%が貯蓄ゼロです。この年代の最大の制約は奨学金返済です。

奨学金返済の実態

日本学生支援機構(JASSO)のデータによると、貸与型奨学金の平均貸与総額は以下の通りです。

種別 平均貸与総額 平均返還年数 月額返済額(概算)
第一種(無利子) 208万円 14年 約12,400円
第二種(有利子) 336万円 17年 約16,500円

返済月額の平均は15,226円。手取り20万円前後の若手社会人にとって、この負担は決して軽くありません。

『今やるべきこと』の優先順位

  1. 奨学金返済を最優先:特に第二種(有利子)は繰上返済で利息負担を減らせます。
  2. 新NISAつみたて投資枠を月数千円〜1万円で開始:2026年時点で年間120万円上限(月10万円)ですが、まずは月3,000円〜5,000円の少額から始めることが重要です。20代から始めれば、複利効果を最大限享受できます。
  3. 企業型DCがある場合は、加入や拠出の条件を確認しましょう:会社が掛金を上乗せする制度であれば、実質的に報酬が増えるのと同じ効果があります。選択制DCでは給与が減額される場合があるため、制度内容の確認が必要です。
💡 ポイント:新NISAは生涯非課税保有限度額1,800万円の枠があり、未使用枠の翌年繰越はできません。少額でも早く始めることで、長期の複利効果を得られます。

30代:教育費・住宅ローンとiDeCo改正(2026年12月)の活用

30代の単身世帯では32.3%、二人以上世帯では17.6%が貯蓄ゼロです。この年代の制約は教育費と住宅ローンの両立です。

iDeCo改正(2026年12月拠出分から適用)の活用

2026年12月から適用されるiDeCo改正により、以下の変更が実施されます。

区分 改正前 改正後
加入可能年齢 65歳未満 70歳未満(老齢基礎年金等未受給が条件)
自営業(第1号) 月6.8万円 月7.5万円
企業年金なし会社員(第2号) 月2.3万円 月6.2万円
企業年金あり会社員・公務員 月1.2万円〜2万円 企業型DCとの合算で月6.2万円上限に統一

特に企業年金のない会社員は、掛金上限が月2.3万円から6.2万円へと大幅に拡大されます。所得控除により、住民税・所得税の節税効果も大きくなります。

『今やるべきこと』の優先順位

  1. 住宅ローン控除と新NISA・iDeCoのバランスを取る:住宅ローン控除の期間中と終了後で、新NISAつみたて投資枠(年120万円)とiDeCoのどちらを優先するかは、世帯の状況によって異なります。
  2. 教育費の見通しを立てる:児童手当の拡充(2024年10月〜)や高校無償化の所得制限撤廃を活用し、教育費の一部を資産形成に回せるか検討します。
  3. iDeCoの改正を見据えた拠出計画:2026年12月以降、月6.2万円まで拠出可能になるため、企業年金のない会社員の場合、年間最大74.4万円が所得控除の対象になります(企業年金がある場合は上限が異なります)。増額には金融機関ごとの事前手続きが必要で、締切も異なります。

40代:住宅ローン残債と老後資金形成の両立

40代の単身世帯では32.1%、二人以上世帯では18.8%が貯蓄ゼロです。金融資産保有額は単身859万円(中央値100万円)、二人以上1,486万円(中央値500万円)と、平均値と中央値の乖離が大きくなっています。

『今やるべきこと』の優先順位

  1. 住宅ローンの繰上返済と資産形成のバランス:低金利のローンであれば、繰上返済より新NISA・iDeCoでの運用を優先する選択肢もあります(どちらが有利かは、ローン金利・期間・リスク許容度によって異なります。世帯の状況で判断してください)。
  2. 新NISA成長投資枠の活用:つみたて投資枠(年120万円)に加え、成長投資枠(年240万円)を併用すれば、年間最大360万円まで非課税で運用できます。
  3. 子どもの教育費ピークを見据えた計画:4年間の大学費用は、私立文系で約410万円、私立理系で約540万円が目安です(文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果」の初年度納付金から、本記事で試算した概算)。教育費のピークを迎える前に、資産形成を加速させることが重要です。

50代:退職金・年金繰り下げ・在職老齢年金改正の戦略

50代の単身世帯では35.2%と最も高い貯蓄ゼロ割合を示しています。二人以上世帯では18.2%です。この年代は老後資金形成のラストチャンスです。

退職金の実態

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』(2023年公表、2026年時点で最新)によると、退職金の平均額は以下の通りです。

区分 平均退職金額
大学・大学院卒(定年退職) 1,896万円
高校卒(定年退職) 1,682万円

これは勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者の平均(高卒は管理・事務・技術職)で、企業規模や制度の有無によって大きく異なります。退職金制度のない企業もあるため、自助努力での資産形成が不可欠です。

年金繰り下げ受給と在職老齢年金改正

年金繰り下げ受給は、1か月繰下げごとに0.7%増額され、最大75歳まで繰り下げると84%増額されます。また、2026年4月から在職老齢年金の支給停止基準額が月51万円から65万円に引き上げられました(政府広報)。働きながら年金を受け取りやすくなっています。

『今やるべきこと』の優先順位

  1. 退職金の運用計画を立てる:退職金を一時金で受け取る場合、退職所得控除を活用しつつ、新NISA・iDeCoに移行する戦略を検討します。
  2. 年金繰り下げ受給の検討:健康状態・家計収支・配偶者の年金を踏まえ、65歳以降も働きながら年金を繰り下げる選択肢を検討します。
  3. 在職老齢年金改正の活用:月65万円までは年金が減額されないため、60代後半でも働き続けることで収入と年金を両立できます。

60代以降:公的セーフティネットと取り崩し計画

60代の単身世帯では30.4%、二人以上世帯では12.8%が貯蓄ゼロです。貯蓄が乏しいまま高齢期を迎えた場合、公的セーフティネットの存在を知っておくことが重要です。

年金生活者支援給付金

低所得の年金受給者に対し、年金に上乗せして支給される制度です。2026年度の基準額は以下の通りです。

種別 月額
老齢年金生活者支援給付金 5,620円(保険料納付済480月の場合の基準額。実際の額は納付月数に比例)

65歳以上の老齢基礎年金の受給者で、世帯全員が住民税非課税であり、前年の年金収入とその他所得の合計が82.65万円以下などの要件を満たせば受給できます(所得基準は年度で変わります)。

高額療養費制度の改正(2026年8月〜)

医療費の自己負担額に年間上限が設定されました。

所得区分 年間上限額
区分ウ・エ(年収約200〜770万円) 53万円
住民税非課税世帯 29万円
⚠️ 重要:区分エ(年収約200〜370万円)も区分ウ(年収約370〜770万円)と同じ年間上限53万円の対象です。「区分エは対象外」という誤解をしないよう注意してください。

『今やるべきこと』の優先順位

  1. 公的セーフティネットの申請:年金生活者支援給付金や高額療養費制度など、利用できる制度を把握し、申請漏れを防ぎます。
  2. 取り崩し計画の策定:保有資産がある場合、4%ルール(年間取り崩し額=資産総額×4%以内)を目安に、資産寿命を延ばす計画を立てます。
  3. 医療・介護費用の見積もり:高額療養費制度の年間上限を前提に、年間医療費の自己負担を見積もります(住民税非課税世帯なら年29万円が上限)。
💡 注意:公的セーフティネットは「これに頼ればよい」という安易な結論ではなく、現状を知る材料として位置づけてください。早い段階からの資産形成が、選択肢を広げる最善の方法です。

まとめ:データ×制度×実行可能な小さな一歩

貯蓄ゼロ世帯の割合は、単身世帯で30.1%、二人以上世帯で15.7%と、依然として高い水準で推移しています。実質賃金のプラス転化や非正規雇用比率の改善という明るい兆しがある一方で、奨学金受給割合の最高水準や過去の物価上昇の影響により、貯蓄余力の回復には時間がかかっています。

この記事では、年代別のライフステージに即した『今やるべきこと』を以下のように整理しました。

どの年代にも共通するのは、「データ×制度×実行可能な小さな一歩」というアプローチです。大きな金額を一度に投資する必要はありません。月数千円からでも、制度を正しく理解し、長期の視点で続けることが、将来の選択肢を広げる第一歩になります。

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2026年10月26日の訂正:退職金表の出典混在を修正(規模別の2行を削除)、年金生活者支援給付金の所得基準(82.65万円)と要件、貯蓄ゼロ世帯の表現、奨学金・実質賃金・大学費用の記述、企業型DC・住宅ローン・iDeCoに関する断定的な表現を修正しました。投資には元本割れ・価格変動のリスクがあります。

📌 免責事項

本記事は金融経済教育推進機構(J-FLEC)、厚生労働省、総務省、日本学生支援機構(JASSO)等の公的機関が公表したデータを基に、2026年10月1日時点の情報をもとに作成されています。制度改正や税率の変更により、記載内容が変更される場合があります。個別の投資判断や税務相談については、ファイナンシャルプランナー・税理士等の専門家にご相談ください。本記事の情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、当サイトは一切の責任を負いかねます。