資産形成・積立術

モンテカルロ・シミュレーターの使い方2026:積立版・取り崩し版で「確率」を読む手順と、前提(GPIF・インフレ)の見方

公開日:2026年10月22日カテゴリ:資産形成・積立術
動画3分でわかる:モンテカルロ・シミュレーターの「確率」の読み方【概要動画】

約3分・音声と字幕つき。内容は2026年10月22日時点で、本文の要点です。GPIFの第5期の基本ポートフォリオの前提を使い、ツールの既定入力で試算した結果です。GPIFが公表した数値ではありません。予測や保証でもありません。
音声:VOICEVOX:玄野武宏(CV:ガロ)

積立版も取り崩し版も、既定の入力のまま実行すると「約38%」と表示されます。ところが前者は「60歳で目標額に届く割合」、後者は「100歳まで資産が尽きない割合」で、同じ数字でも別の指標です。この記事では、確率の読み方と、その土台になる前提の疑い方を、入力から順に手順で解説します。

同じ「約38%」が2つ並ぶ理由:確率の中身を取り違えない

マネトモのモンテカルロ・シミュレーターは、積立版(simulator-investment)と取り崩し版(simulator-withdrawal)のどちらも、ツールの既定入力を実行すると約38%という数字が出ます。ただし、数字が同じでも、測っているものは違います。

項目積立版取り崩し版
表示される確率目標達成確率成功確率
何の割合か目標年齢の時点で目標金額に届いたシナリオの割合100歳まで資産が枯渇しなかったシナリオの割合
既定の入力初期資産0円、月5万円、30歳→60歳、目標3,000万円、株式60%・債券30%・現金10%3,000万円、60歳から100歳までの40年、月10万円、株式50%・債券40%・現金10%
既定の結果(インフレ考慮・平均シナリオ)約38%(乱数による誤差があり、実行のたびに少し変わる)標準エンジンで約38%

いずれも、ツールの既定入力を実行した結果です。将来の予測ではありません。

この記事の読み方の約束

この記事では「◯%なら安心」「◯%なら危険」という線引きはしません。確率は、前提を変えたときの違いを見るための目安です。予測でも保証でもありません。

線引きをしない理由は2つあります。1つ目は、確率が前提(経済シナリオやインフレ設定)で大きく動くことです。2つ目は、ツールの入力欄にない事情(ほかの収入や、まとまった支出など)が計算に入っていないことです。数字そのものを評価するより、「どの前提を変えるとどう動くか」を見るほうが、このツールの使い方としては実用的です。

このシミュレーターで分かること・分からないこと

モンテカルロ法とは、前提(期待リターン・リスク・相関)をもとに乱数で多数の仮想シナリオを作り、結果の分布を見る手法です。このツールは、乱数で多数のシナリオを作ります(積立版・取り崩し版は10,000通り、統合版は1,000通り)。過去データそのものの再現ではなく、将来の予測や保証でもありません。

ツールで確認できること

  • 前提の下で、目標に届く(尽きない)シナリオがどのくらいの割合か
  • 結果のばらつきの幅(10/25/50/75/90のパーセンタイル)
  • 経済シナリオ(GPIFの4ケース)を変えたときの違い
  • 入力(積立額・取り崩し額・配分など)を変えたときの違い

ツールでは確認できないこと

  • 将来の実際の運用成績
  • 信託報酬・売買手数料・税金が実際の手取りに与える影響(ツールはこれらを計算に含めていません)
  • 特定の商品や配分が有利かどうかの判断
  • 入力欄にない個別の事情

なぜ「平均利回り」だけの試算では足りないのか

「年平均◯%で運用できたら」という試算は、毎年同じ利回りが続く1本の線を描きます。現実の相場は年ごとに上下し、同じ平均でも、いつ下落が来るかで結果が変わります。とくに取り崩し期間の序盤に下落が重なると、資産が減った状態から取り崩しを続けることになり、資産が尽きやすくなります。これがシーケンスリスクと呼ばれる考え方です。

モンテカルロ法は、この順序の違いを含めて多数の経路を作り、結果が「どのあたりに、どのくらいの幅で散らばるか」を見せます。平均利回りの1本の線では見えない幅を見ることが、このツールを使う最大の理由です。

前提を先に疑う:GPIF第5期の4シナリオとインフレの扱い

確率の数字は、前提から機械的に出てきます。入力の手順に入る前に、前提がどこから来ているかを確認しておくと、結果の見え方が変わります。

前提の出所:GPIF第5期(2025〜2029年度)の基本ポートフォリオ

国内債券・外国債券・国内株式・外国株式の4資産には、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の第5期中期目標期間の基本ポートフォリオの前提(円ベース・名目)を使っています。第5期は2025年度から2029年度です。ただし、GPIFの前提は公的年金の運用のための想定で、個人の運用成果を予測するものではありません。

期待リターンは4つの経済シナリオで幅がある

GPIFは、経済の前提を4つのケース(高成長実現ケース、成長型経済移行・継続ケース、過去30年投影ケース、1人当たりゼロ成長ケース)に分けて、資産ごとの期待リターンを置いています。GPIFの資料にある各ケースの名目の期待リターンは次のとおりです。

資産(名目・円ベース)高成長実現成長型移行・継続過去30年投影ゼロ成長
国内債券3.2%2.7%0.5%-0.3%
外国債券4.9%4.4%2.2%1.4%
国内株式7.5%7.0%4.8%4.0%
外国株式8.1%7.6%5.4%4.6%

出典:GPIF「第5期中期目標期間における基本ポートフォリオについて ~詳細~」の経済前提と期待リターンの表。ツールの既定は、4つのケースの平均(国内債券1.5%・外国債券3.2%・国内株式5.8%・外国株式6.4%)です。

たとえば国内株式は、4.0%から7.5%まで幅があります。つまりGPIFの想定リターンは「将来こうなる」という予測ではなく、「経済がこう進んだ場合の前提」を4通り並べたものです。シナリオを切り替えて確率が変わるのは、この前提の幅が結果に表れているからです。

リスク(標準偏差)と相関

資産標準偏差
国内債券2.60%
外国債券(円ベース)9.72%
国内株式19.19%
外国株式(円ベース)20.35%
資産の組み合わせ相関係数
国内債券-外国債券0.073
国内債券-国内株式-0.254
国内債券-外国株式-0.125
外国債券-国内株式0.271
外国債券-外国株式0.560
国内株式-外国株式0.692

出典:同上(リスクと相関は、過去30年の月次リターンから推計された値)。ツールは、株式と債券の相関にこのGPIFの値を使います。

インフレ:「考慮する(実質)」と「考慮しない(名目)」

インフレの扱いには、一般に実質と名目という2つの見方があります。ここを取り違えると、確率の意味が変わります。ツールでは、「インフレ(物価上昇)の扱い」で「考慮する」を選ぶと実質、「考慮しない」を選ぶと名目で計算します。

設定金額の見方取り崩し額
考慮する(実質)金額を現在の物価水準に直して見る今の購買力で毎月同じ額を取り崩す見方
考慮しない(名目)額面のまま見る額面が固定なら、購買力は年々低下する見方

物価上昇率の既定は、GPIFの経済前提に連動します。シナリオ別の値は次のとおりで、手入力で変更もできます。

シナリオ物価上昇率の既定
高成長2.0%
成長型2.0%
過去30年0.8%
ゼロ成長0.4%
平均1.3%

確率を別の結果と比べるときは、インフレの設定を揃えてください。同じ「月10万円」でも、考慮するなら今の購買力の10万円、考慮しないなら額面だけが固定された10万円で、意味が違います。

GPIFにない資産は「仮定値」

S&P500、NASDAQ100、金、原油、暗号資産などはGPIFの基本ポートフォリオの対象外です。これらの資産をツールで選ぶ場合、使われている値は公的資料に基づくものとは限りません。画面の期間表示は「米ドル建て・長期平均の目安(仮定値・出所未確認)」で、暗号資産は「根拠のない仮定値」と明記されています。公的な根拠のある値ではない可能性があるので、これらを組み入れた結果は、とくに慎重に読んでください。

前提をたどる3ステップ

  1. GPIFの資料(第5期中期目標期間における基本ポートフォリオについて ~詳細~)を開く
  2. 経済前提の表と、期待リターン・標準偏差・相関の表を探す
  3. ツール画面の値と見比べる。食い違いがあれば、更新時期や設定の違いを疑う

GPIFの資料自体も、期待リターン・標準偏差・相関という前提を明示したうえで、リスクを確率などの形で示しています。ツールの結果は、その前提を使った別の試算であり、GPIFが公表する指標とは別物です。混同しないでください。

ほかにGPIFの「基本ポートフォリオの考え方」や「年金積立金の運用目標」のページも、前提の背景を知る手がかりになります。

手順1:積立版で「目標達成確率」を読む

ステップ1:入力する項目

項目既定選び方のポイント
初期資産0円すでにある投資資産の評価額
毎月の積立額5万円期間別に変える「積立スケジュール」も使える
開始年齢・目標年齢30歳・60歳積立期間の長さが結果に直結する
目標金額3,000万円現在の物価水準で考えるか、名目で考えるかをインフレ設定と合わせる
資産配分株式60%・債券30%・現金10%株式は外国株式(GPIF第5期・円ベース)、債券は国内債券(GPIF第5期)が既定で、指数は選び直せます
リバランスなし配分を元に戻す頻度を、なし・1年・3年・5年ごとから選べます。頻度を変えて試すと違いが分かります

各入力欄の詳しい説明は、ツール画面でご確認ください。

ステップ2:結果の画面で見る場所

パーセンタイルは、たとえば10のラインなら「下から数えて10%目の結果」です。中央値の周りに、上振れ・下振れの帯が広がっていく様子を見ます。確率の数字だけでなく、下側のライン(10や25)が目標に対してどの位置にあるかを見ると、「届かなかったシナリオが、どのくらい届かなかったか」も分かります。

モデルケース(仮想シミュレーション):既定入力で実行した場合

初期資産0円、月5万円を30歳から60歳まで積み立て、目標3,000万円。株式60%・債券30%・現金10%、インフレ考慮・平均シナリオです。

シミュレーション結果(想定):目標達成確率は約38%(乱数による誤差があり、実行のたびに少し変わります)。払い込む元本は1,800万円(5万円×12か月×30年)で、目標3,000万円との差を運用で埋められるかどうかを見る設定です。

※ツールの既定入力を実行した結果であり、予測ではありません。特定の商品や配分を勧めるものでもありません。

ステップ3:シナリオ別の幅を見る

同じ入力のまま、GPIFの4シナリオ別に目標達成確率を見ると、前提の違いがどれだけ効くかが分かります。積立版には、シナリオ別の達成確率を表示する欄があります。

GPIFシナリオ目標達成確率(既定入力・約)ご自身の入力で記入
高成長実現ケース約51%
成長型経済移行・継続ケース約45%
過去30年投影ケース約34%
1人当たりゼロ成長ケース約30%

既定入力(初期資産0円・月5万円・30歳から60歳・目標3,000万円・株式60%・債券30%・現金10%・インフレ考慮)を、シナリオ別に各2,000回の試行で実行した結果です。乱数による誤差は±2ポイント程度あり、予測ではありません。右の列は、ご自身の入力で記録するための欄です。

既定入力では、高成長ケースの約51%からゼロ成長ケースの約30%まで、20ポイントほどの幅があります。同じ人が同じ金額を積み立てても、経済シナリオの前提だけで達成確率の見え方は大きく変わります。ご自身の入力で4つのケースを実行し、前提の違いでどれだけ動くかを見るのが、この表の使い方です。

なお、乱数による誤差があるため、数字の小さな差を追いかけるのではなく、全体の傾向を見てください。

「達成確率を上げるには何を変えるか」の見方

確率を動かせる入力は、おおむね次のとおりです。

どれがどれだけ効くかは、入力した条件によって変わります。具体的な使い方は次の「感応度の見方」で説明します。

手順2:取り崩し版で「成功確率」と「資産寿命」を読む

ステップ1:入力する項目

項目既定選び方のポイント
取り崩し開始時の資産額3,000万円取り崩しを始める時点の評価額
開始年齢・取り崩し期間60歳から40年終点は100歳。長生きの前提で見る設定
毎月の取り崩し額10万円(初期資産の4%÷12)定額・定率・4%ルール、3.5%・3%のプリセット、期間別スケジュール
公的年金見込み額を入力する欄月額と開始年齢(既定65歳)を入力すると、開始年齢以降は取り崩し額から年金が差し引かれます(開始前は全額が資産から出ます)
資産配分株式50%・債券40%・現金10%途中1回の配分変更と、リバランスの設定がある
エンジン標準エンジン標準エンジンは毎年独立の対数正規分布。高度エンジンを選ぶと、t分布・平時と危機の切り替え(レジーム)・ジャンプを加えます

高度エンジンの危機時などの設定値は、ツールの仮定値で、GPIFのような公的資料の値ではありません。

ステップ2:結果の画面で見る場所

成功確率だけでなく、資産寿命の下位10%を見ると、「尽きるシナリオが、何歳ごろに尽きるのか」を確認できます。確率が同じでも、100歳の直前に尽きるのと、かなり早い時期に尽きるのとでは、見え方が違います。

モデルケース(仮想シミュレーション):既定入力で実行した場合

3,000万円を60歳から100歳までの40年間、月10万円ずつ取り崩す設定です。株式50%・債券40%・現金10%、インフレ考慮・平均シナリオで試算します。

シミュレーション結果(想定):成功確率は標準エンジンで約38%です。

※ツールの既定入力を実行した結果であり、予測ではありません。公的年金の月額は、ご自身の見込み額を入力する欄です。

取り崩し額は、取り崩し版の確率に影響しやすい入力の1つと考えられます。月の取り崩し額を変えて再実行し、確率がどう動くかを、ご自身の入力で確かめてください。結果は入力条件によって変わります。

4%ルールとの付き合い方

取り崩し方式には「4%ルール」や、3.5%・3%のプリセットがあります。4%ルールは米国の研究(トリニティ・スタディ)で知られる目安です。前提は、米国の株式・債券、インフレ調整後の取り崩し、30年間という期間です。

取り崩し版の既定の期間は40年(60歳から100歳)で、30年を前提とした米国の研究とは期間が異なります。このため、同じ結果にはなりません。期間が長くなれば、一般に成功確率は低くなります。「4%なら大丈夫」といった目安として使うのではなく、「4%という出発点を、自分の前提で試すと確率がどう出るか」を見るために、プリセットを使うのがよいでしょう。

公的年金とインフレを入れて読む

公的年金を入力できる場合、年金を入れると資産から出ていく額が減るため、確率の見え方が変わります。月額と開始年齢(既定65歳)を入力すると、開始年齢以降は取り崩し額から年金が差し引かれ、開始前は全額が資産から出ます。年金の見込み額は、人によって大きく異なります。入力するときは、ご自身の年金の見込み額を確認したうえで、控えめな数字と、そうでない数字の両方で試すと、幅が分かります。

また、実際の月々の引き出しとの違いなど、計算上の前提の限界は、限界の章で触れます。

入力を1つずつ動かす:感応度の見方

確率を読むうえで最も役に立つのは、「1回に1項目だけ変える」ことです。複数の項目を同時に変えると、どれが効いたのか分からなくなります。

順番やること
1まず既定の入力、またはご自身の現実的な入力で実行し、確率を記録する
21項目だけ変えて再実行し、確率の変化を記録する
3元に戻して、別の1項目を変える
4最後に、経済シナリオ(GPIFの4ケース)とインフレ設定を切り替えて、前提の幅を確認する

積立版は、乱数による誤差が出るため、同じ入力でも実行のたびに結果が少し変わることがあります。記録は次のような表にまとめておくと、あとで見返せます。

変えた項目変更前変更後確率の変化
(例)毎月の積立額
(例)毎月の取り崩し額
(例)経済シナリオ

取り崩し版には、取り崩し額を動かしたときの違いを見る感度表があります。まずこの表を見て、「自分の取り崩し額が、確率の変化に対してどれくらい敏感か」を確認できます。表の中に確率が急に動く区間があれば、その周辺の取り崩し額は、前提が少し変わるだけで結果が変わりやすい領域だと読めます。

感応度を見るときの3つの注意

1. 確率が動いた幅だけでなく、動いた「方向」も見る。
2. 乱数による誤差より小さな差は、意味のある差と読まない。
3. 前提(シナリオ・インフレ)を変えて動く幅のほうが、入力を少し変えて動く幅より大きい場合があることを意識する。

限界と注意点:確認できないこと

確率は予測でも保証でもありません

ここで見える確率は、前提を変えたときの違いを見る目安です。将来の運用成果を示したり、保証したりするものではありません。数字が高い・低いという事実だけで、行動を決めないでください。

積立版・取り崩し版・統合版の使い分け

ツール向いている場面特徴
積立版(simulator-investment)積立の途中で、目標額への届き方を見たい目標達成確率、パーセンタイル推移、GPIF4シナリオ別の確率
取り崩し版(simulator-withdrawal)取り崩しの計画を考え始めた成功確率、資産寿命、取り崩し額の感度表、標準/高度エンジン
統合版(simulator-lifecycle)積立から取り崩しまでを1本の流れで見たい積立から取り崩しまでを1本の流れで試算する。取り崩し開始を年齢または資産額で指定でき、公的年金・退職金の入力と、生活費の感度表がある

使い分けの目安は、積立中なら積立版、取り崩しを検討する段階なら取り崩し版です。積立版と取り崩し版は、前提を詳しく調整できる設計です。統合版は、積立から取り崩しまでの流れ全体を見る補足として使えます。どのツールでも乱数による誤差があるため、数字の細かな差には注意してください。

まとめ

まずはツールの既定入力で実行し、次にご自身の条件で試し、最後に経済シナリオを切り替えてみてください。確率の数字より、「何を変えると何が動くか」をつかむことが、このツールの上手な使い方です。

実際に動かして、確率の変化を確かめる

積立版で目標達成確率を、取り崩し版で成功確率を試算できます。前提を変えたときの違いを見る目安としてご利用ください。

シミュレーターを使ってみる → 取り崩し版はこちら →
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買や投資手法を推奨するものではありません。シミュレーションの結果は、設定した前提に基づく試算であり、将来の運用成果を予測・保証するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。信託報酬・売買手数料・税金は、実際の手取りに影響します。最終的な投資判断は、ご自身の責任で行ってください。制度や数値は変更される場合があるため、GPIFなどの一次情報をあわせてご確認ください。