資産形成・積立術

個別銘柄でインデックスに勝てる確率はどのくらいか:米国株の長期データと論文で検証する

公開日:2026年10月23日 | マネトモ編集部 | 対象:米国株のデータに基づく解説
動画3分でわかる:個別株はインデックスに勝てるのか【概要動画】

約3分・音声と字幕つき。内容は2026年10月23日時点で、本文の要点です。数値の出典は、各論文の要旨とS&P Dow Jones IndicesのSPIVAです。米国株のデータに基づく内容です。
音声:VOICEVOX:玄野武宏(CV:ガロ)

「個別株でインデックスに勝てる確率は何%か」という問いに、論文は単一の数字では答えていません。確認できるのは、個別銘柄の成績が一部の銘柄に大きく偏るという「分布の形」と、比べる相手(国債・指数・ファンド)ごとに別々の数字があるという事実です。本記事は、米国株の公開データと査読論文から、出典を確認できた数字だけを並べて整理します。

この記事の流れ
  1. 結論:確認できたのは「勝つ確率」ではなく「分布の形」
  2. 「指数に勝つ」と「国債に勝つ」は別の問い
  3. ベッセンバインダー氏の研究:米国株の収益は一部の銘柄に偏る
  4. 銘柄を絞ると何が起きるか:Heaton氏らの「Why Indexing Works」
  5. 参考:アクティブファンドの成績(SPIVA)
  6. 個人投資家の売買成績:バーバー=オディーンの研究
  7. データから言えること・言えないこと
  8. それでも個別株を持つなら:考え方の選択肢
  9. まとめ
  10. 出典一覧

結論:確認できたのは「勝つ確率」ではなく「分布の形」

先に、この記事で確認できた範囲を整理します。結論を先に決めず、論文と公的な統計に書かれていることだけを土台にしています。

この記事が「やらない」こと

「個別株が指数に勝つ確率はXX%」という単一の数字は作りません。出典で確認できない数字は載せず、確認できた数字は対象期間・比較の相手・出典をその場に書きます。また、個別株投資をやめるべき、あるいはインデックスが正解だと断定することもしません。

よくある誤解を先に崩しておきます。「7銘柄中4銘柄が劣後」と聞くと、「個別株の多くは指数に負ける」と読みたくなりますが、この研究の比較相手は株価指数ではなく1か月物の国債です。指数に負ける確率と、国債に負ける確率は別の問いです。この違いを次の節で見ていきます。

「指数に勝つ」と「国債に勝つ」は別の問い

個別株の成績に関する数字は、何と比べたかで意味が大きく変わります。同じ「負けた」という言葉でも、次のように別の統計です。

比べる相手主な出典何を表す数字か
1か月物の米国短期国債ベッセンバインダー氏の研究個別銘柄を持ち続けた生涯リターンが、国債の運用を下回った銘柄の割合
株価指数(S&P500など)Heaton氏らの理論研究、SPIVA銘柄の組み合わせやファンドが、指数に対して勝つ・負ける頻度
市場全体の平均バーバー=オディーン個人投資家の口座の年率リターンを、市場と比べた差

もう一つ注意したいのは、SPIVAが示すのは「アクティブ運用の投資信託」の成績であり、個人が選んだ個別銘柄の成績ではない点です。ファンドは運用コストや運用ルールの制約を抱えており、個人が数銘柄を保有する場合とは条件が違います。ファンドの勝率を個別株の勝率として読み替えることは、できません。

さらに、期間(いつからいつまでか)、配当を含むか、上場廃止となった銘柄を含めるかでも結果は変わります。出典のない数字をつなぎ合わせて一つの確率を作ることは、誤解のもとになります。

ベッセンバインダー氏の研究:米国株の収益は一部の銘柄に偏る

この分野でよく引用されるのが、ヘンドリック・ベッセンバインダー氏の論文「Do Stocks Outperform Treasury Bills?」(Journal of Financial Economics、2018年)です。ここでは確認できた数字だけを短く示します。

項目確認できた内容対象・出典
国債に劣後した銘柄7銘柄中4銘柄(約57%。7分の4を丸めた値)CRSPの米国普通株、1926年以降。生涯の買い持ちリターンを1か月物国債と比較(Bessembinder 2018)
純増益を生んだ銘柄上位約4%の企業が、市場全体の純増益を説明同上。それ以外の銘柄は、全体として国債と同程度のリターン

出典:Bessembinder (2018) Journal of Financial Economics 129(3), 440-457 の要旨。終了年は要旨に記載がなく、本記事では「1926年以降」と表記します。

ここで押さえたいのは、「上位約4%が純増益を説明する」を「残りの96%は損をする」と読んではいけない点です。論文の要旨によれば、それ以外の銘柄は全体として国債と同程度のリターンでした。損失ではなく、「国債並みにとどまった」という意味です。

ベッセンバインダー氏自身は、個別銘柄のリターンが「正の歪み」を持つ、つまり一部の銘柄が大きく上がる形の分布になっていることを指摘し、この歪みが、分散の乏しい運用が市場平均に負けやすい理由の説明になると述べています。ただし論文が示しているのは定性的な説明であり、「何%の確率で負ける」という単一の確率ではありません。

世界の株式で見たときの補足

同氏らは後に、対象を世界に広げた研究(Bessembinder, Chen, Choi & Wei、Financial Analysts Journal 79巻3号、2023年)を発表しています。対象は世界の普通株約64,000銘柄、期間は1990年1月から2020年12月です。

期間と対象が異なるため、1926年以降の米国株の数字と混同しないよう注意が必要です。それでも、「少数の銘柄に収益が集中する」という形が、期間や地域を変えても現れている点は、読み取れる範囲の事実です。

銘柄を絞ると何が起きるか:Heaton氏らの「Why Indexing Works」

収益が少数の銘柄に偏るなら、保有する銘柄を絞るほど、その「当たり」を持てない可能性が高まります。この点を理論モデルで扱ったのが、Heaton、Polson、Witteの論文「Why Indexing Works」(Applied Stochastic Models in Business and Industry、2017年掲載)です。

論文の要旨によると、指数からランダムに銘柄の部分集合を選ぶと、指数に勝つ可能性も上がりますが、指数に負ける可能性も上がります。そして、負ける頻度のほうが勝つ頻度より多くなります。このモデルの動機は、指数に採用された銘柄のうち上位の銘柄が、他の銘柄より大きく上がるという観察です。

「銘柄数ごとの確率」は、本記事では示しません

「何銘柄持てば指数に勝てる確率がどれだけ上がるか」という具体的な数値は、今回の調査では出典つきで確認できませんでした。ネット上には「1銘柄なら数%、100銘柄なら数十%」といった数字が出回っていますが、論文や定義を特定できないため、ここでは使いません。確認できるのは「銘柄を絞るほど、指数に負ける頻度が高くなる傾向がある」という定性的な結論までです。

この結論は、「個別株は必ず負ける」という意味でもありません。勝つ可能性も、銘柄を絞るほど上がると論文は述べています。言えるのは、結果のばらつきが大きくなり、平均より負ける側に偏りやすい、という分布の性質です。

参考:アクティブファンドの成績(SPIVA)

ここからは、個別銘柄ではなく「プロが運用するアクティブファンド」の成績です。この節では参考として数字を確認するにとどめます。

S&P Dow Jones Indicesが公表している「SPIVA U.S. Scorecard」の、基準日2025年12月31日の版では、次の数字が確認できました。

項目数字補足
米国大型株ファンドで、S&P500に負けた割合(2025年の1年間)79%2024年は65%。S&P Dow Jones Indicesは、過去25年の履歴でアクティブ大型株運用にとって「4番目に悪い年」と説明
長期(15年)の傾向15年では、どのカテゴリでも過半数のファンドがベンチマークに勝てなかった各期間の具体的な割合は、本記事では引用しない

出典:S&P Dow Jones Indices「SPIVA U.S. Scorecard Year-End 2025」。

5年・10年・15年の大型株の具体的な割合は、参照した要約ごとに数値が食い違っていたため、本記事には載せていません。公式レポートの表で確認した数字だけを使う、という方針です。

日本の数字は別に確認が必要

同じ基準日のSPIVA Japanでは、日本の大型株ファンドのうち、ベンチマーク(S&P/TOPIX 150)に負けたのは49%でした。2017年以降で最も低い水準で、S&P/TOPIX 150は2025年に25.0%上昇しています。一方、ほかの5カテゴリでは、80%超のファンドがベンチマークに負けています。

ただし、これは日本のファンドの単年の結果です。日本の個別銘柄の勝率ではありませんし、米国のデータと同じ結果になるとも言えません。本記事の結論は、米国株のデータに基づくものです。

個人投資家の売買成績:バーバー=オディーンの研究

次に、個人が実際に売買した成績です。ブラッド・バーバー氏とテランス・オディーン氏の論文「Trading Is Hazardous to Your Wealth」(Journal of Finance、2000年)は、米国の大手ディスカウント証券会社の個人口座66,465世帯(1991〜1996年)を分析しています。

区分年率リターン
最も売買した層11.4%
平均的な世帯16.4%
同期間の市場17.9%

出典:Barber & Odean (2000) Journal of Finance 55(2), 773-806 の要旨。平均的な世帯のポートフォリオの年間回転率は75%でした。

この表は、「個人投資家全体が市場に17.9%対11.4%で負けた」という意味ではありません。11.4%は「最も売買した層」の数字で、平均的な世帯は16.4%でした。差が大きく出たのは、売買を繰り返した層です。また、平均的な世帯は高ベータ・小型・バリュー株に偏っていたと報告されています。

この研究から言えるのは、売買の頻度が高いほど成績が市場から離れる傾向が、1991〜1996年の米国の個人口座では観察された、という範囲です。日本の個人投資家に、同じ数字をそのまま当てはめることはできません。

データから言えること・言えないこと

ここまでの内容を、言える範囲と言えない範囲に分けて整理します。

言える(出典で確認できた)言えない(確認できていない)
米国株では、7銘柄中4銘柄が1か月物国債に劣後した(1926年以降)「個別株の約57%が指数に負ける」
上位約4%の銘柄が、市場全体の純増益を説明していた「96%の銘柄は損をする」
銘柄を絞るほど、指数に勝つ可能性も負ける可能性も上がり、負ける頻度のほうが多い(理論モデル)銘柄数ごとの具体的な確率
米国大型株のアクティブファンドの79%が、2025年にS&P500に負けたファンドの勝率を、そのまま個別株の勝率とみなすこと
最も売買した個人層は、1991〜1996年に市場を下回った個人投資家全体が市場に負けた、日本の個人も同じ結果になる

こう整理すると、「個別銘柄でインデックスに勝てる確率」は、統計的な一点の値というより、「ばらつきが大きく、事前に当たりを選ぶのが難しい分布」の話だとわかります。ここに、売買を重ねるほど成績が離れやすいという個人の行動データが重なります。

ただし、これらはすべて過去の統計です。将来の個別銘柄が同じ分布になる保証はありませんし、データは平均的な傾向であって、個々の投資家の結果を決めるものでもありません。

それでも個別株を持つなら:考え方の選択肢

ここまで見てきた分布を踏まえたうえで、個別株をどう位置づけるかは、投資家ごとの目的とリスク許容度によって異なります。「持つべき」「持つべきでない」と断定する材料は、データにはありません。考え方の選択肢として、次の3つを挙げます。

特定の銘柄名を推奨する意図は、本記事にはありません。新NISAの成長投資枠の使い方など制度の詳細は、金融庁などの公的情報で最新の内容をご確認ください。個別の税務や資産設計は、税理士・FPなどの専門家へご相談ください。

個別株を持つ前に、自分に問いたいこと

・その銘柄が不振でも、保有を続けられる金額かどうか。
・売買の記録をつけ、頻度と成績を後から振り返れるかどうか。
・指数連動型との比較を、手数料や税も含めて確認できるかどうか。

まとめ

出典一覧

本記事の数字は、各論文の要旨およびSPIVAの公表内容に基づいています。論文の詳細な条件は原本でご確認ください。

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免責事項:本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や銘柄の売買を推奨するものではありません。過去の統計や研究結果は将来の成果を保証しません。投資には元本割れのリスクがあります。本記事で紹介した数字は、税金や手数料を考慮していません。また、米国株のデータに基づく内容であり、日本株を含む他の市場で同じ結果になるとは限りません。投資判断はご自身の責任で行い、税務や資産設計については税理士・ファイナンシャルプランナー等の専門家へご相談ください。