年金受給者は12月に所得税が戻るのか2026:令和8年分の基礎的控除の引き上げと、確定申告が必要なケース
約3分・音声と字幕つき。内容は2026年11月7日時点で、本文の要点です。数値の出典は日本年金機構・国税庁です。
音声:VOICEVOX:玄野武宏(CV:ガロ)
「年金には年末調整がないから、12月になっても何も変わらない」。そう思っていませんか。実は公的年金にも、毎回の支払時に引かれた所得税を12月の支払時に1年分で計算し直す「精算」があります。令和8年分は基礎的控除の見直しがあり、12月の精算では、65歳以上なら「月割額×25%+11万円(下限18万円)」、65歳未満なら「月割額×25%+11万円(下限14万円)」を使うと日本年金機構が案内しています。ただし、この精算でカバーされるのは一部です。この記事では「自動で戻る人」「そもそも対象外の人」「自分で確定申告をしないと戻らない人」を、手順に沿って自分で判定できるように整理します。
結論:12月に所得税が戻る人・戻らない人
先に結論です。12月の精算で所得税が戻るのは、老齢年金を受給していて、令和8年2月〜11月の支払分から所得税が源泉徴収されている、国内居住の人です。日本年金機構の案内を引用した報道では、精算は自動で行われ、申請は不要とされています。逆に、年金からそもそも所得税が引かれていない人は、精算で戻る税額がありません。そして、医療費控除などを使いたい人は、精算とは別に自分で確定申告をする必要があります。
| タイプ | 状況の例 | 12月の扱い | 次の行動 |
|---|---|---|---|
| 戻る可能性がある人 | 老齢年金を受給中で、令和8年2月〜11月の支払いから所得税が引かれている | 12月の年金支払時に1年分を再計算し、差額を精算(申請不要) | 12月の年金振込通知書で所得税額欄を確認 |
| 精算で戻る税額がない人 | 年金額が源泉徴収の対象外の基準(65歳以上は214万円未満、65歳未満は164万円未満)にあたり、所得税が引かれていない | 引かれていない税金は戻らない | 年金以外の収入があれば、別途確認 |
| 自分で申告が必要になりうる人 | 医療費控除やふるさと納税の寄附金控除を使いたい。令和8年に新たに扶養控除の対象になった親族がいる。12月の年金支払いがない | 精算に反映されない控除がある場合がある。精算の機会自体がない場合もある | 年金の12月精算で反映されるかを機構・国税庁の案内で確認し、反映されないときは確定申告で調整できるか確認(税務署・年金事務所・税理士へ) |
制度の数値は日本年金機構・国税庁の案内に沿って書いていますが、ご自身の還付額や申告の要否は、年金額・年齢・扶養・社会保険料・ほかの所得で変わります。金額を断定せず、確認の手順に絞って解説します。
年金の源泉徴収の基本:毎回引かれ、12月に精算される
公的年金(老齢年金)は、一定の額以上になると、年金を受け取るたびに所得税(復興特別所得税を含む)が源泉徴収されます。会社員の給与と同じく、「とりあえず概算で引いておく」仕組みです。
ここで押さえておきたいのは、「年金受給者には年末調整がない」というのは、言い切れないという点です。給与の年末調整とは手続きが異なりますが、公的年金でも12月の支払時に、1年分の税額を計算し直して、すでに源泉徴収した税額との差額を精算します。日本年金機構の案内では、令和8年11月の年金支払までは改正前の基礎的控除額で源泉徴収し、12月の支払時に改正後の基礎的控除額で計算した1年分の税額と、すでに源泉徴収した税額の差額を精算するとされています。還付が生じる場合は、原則としてその金額が還付されます。
会社員向けの年末調整については、当サイトの記事一覧にある会社員向けの記事で整理しています。年金受給者向けの精算は、扶養親族等申告書に基づく控除が反映される点で給与の年末調整に似ていますが、窓口は勤務先ではなく日本年金機構になります。
「扶養親族等申告書」が精算の前提になる
年金から源泉徴収される所得税で、配偶者控除・扶養控除・障害者控除などを受けるには、日本年金機構へ「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出する必要があります。提出しないと、その分の控除が源泉徴収に反映されません。令和9年分の申告書は、令和8年9月7日(月)から順次送付されており、9月に届く便の提出期限は10月20日、10月に届く便の提出期限は11月30日と案内されています。届いている場合は、封筒や申告書に記載された提出期限をご確認ください。
申告書の提出が遅れた、あるいは出し忘れた場合の扱いは、確定申告で調整できる場合があります。ただし個別の事情で結論が変わるため、年金事務所や税務署にご確認ください。
令和8年分で何が変わるのか
令和8年分の12月精算では、公的年金の源泉徴収に使う基礎的控除額の算式が見直されます。日本年金機構の案内では、12月精算で使う控除額は年齢によって分かれており、次のとおり整理できます。
- 65歳以上の場合:「公的年金等の月割額×25%+11万円」で、下限は18万円(算式の結果が下限を下回るときは下限の額を使います)
- 65歳未満の場合:「公的年金等の月割額×25%+11万円」で、下限は14万円(同様に、下回るときは下限の額を使います)
令和7年分(2025年12月に精算済み)との違いのうち、年金額が一定以下の場合の算式を並べると、次のとおりです。令和7年分と令和8年分を混同しやすいので、区別しておいてください。
出典: 日本年金機構
| 項目 | 令和7年分(2025年12月に精算済み) | 令和8年分(2026年12月に精算) |
|---|---|---|
| 月割額×25%に加える額 | 10万円 | 11万円 |
| 65歳以上の下限 | 16.5万円 | 18万円 |
| 65歳未満の下限 | 12.5万円 | 14万円 |
※令和8年分の数値は、12月精算で使う算式です。ご自身の控除額は日本年金機構の案内でご確認ください。
源泉徴収の対象外になる年金額も引き上げ
もう一つの変更が、公的年金の源泉徴収の対象外になる年金額です。65歳以上は205万円未満から214万円未満へ、65歳未満は155万円未満から164万円未満へ引き上げられました。令和7年分では、65歳以上が158万円未満から205万円未満へ、65歳未満が108万円未満から155万円未満へ引き上げられ、12月の定期支給時に差額を還付したと案内されています。
出典: 日本年金機構
なお、給与と年金の両方がある人に関する公的年金等控除の見直しは、令和9年分以後の別の改正です。令和8年分の12月精算とは関係がないため、この記事では触れません。
いくら戻るのか:金額の決まり方とモデルケース
「結局いくら戻るの?」が一番知りたいところですが、金額は人によって異なるため、ここでは断定した金額を示しません。理由は、精算額が次の要素の組み合わせで決まるためです。
- 年金額(月割額)と年齢(65歳以上か未満か)
- 扶養親族等申告書で申告した控除(配偶者・扶養・障害者など)の有無
- 支払時に差し引かれる社会保険料等
- 令和8年2月〜11月に実際に源泉徴収された所得税の額
12月の精算では、「改正後の控除額で計算した1年分の税額」と「すでに源泉徴収した税額」の差額が精算されます。12月精算で使う基礎的控除の算式は、令和7年分から令和8年分で、月割額に加える額が10万円から11万円に、65歳以上の下限が16.5万円から18万円に、65歳未満の下限が12.5万円から14万円に増えました。控除が増える方向の見直しですので、控除が増えた分だけ課税の対象となる額が小さくなり、引きすぎていた税額がある場合に精算の対象になります。ただし、精算額は年金額や控除の状況によって変わるため、一律の金額は言えません。
仮想モデルケースで見る「戻り方」の違い
- モデルA(65歳以上・年金のみ・扶養なし):令和8年2月〜11月に所得税が引かれている想定。12月の精算で、改正後の控除額で1年分を計算し直し、差額があれば自動で精算されます。確認するのは12月の振込通知書です。
- モデルB(65歳以上・年金額が対象外の基準未満):源泉徴収の対象外で、所得税が引かれていない想定。精算で戻る税額はありません。ただし、年金以外の収入があるなら、確定申告の要否を別に確認します。
- モデルC(65歳以上・医療費が多い年):12月の自動精算を受けたうえで、医療費控除を使うなら確定申告が必要です。精算は自動、医療費控除は自分で申告、という二段構えになります。
個別の試算をしたい場合は、年金振込通知書の金額と、日本年金機構・国税庁の計算例を照らし合わせてください。当サイトのシミュレーターは、年金の受取額を考えるときの参考になります(税額の精算を計算するものではありません)。
いつ・どこで確認できるか
12月の年金の定期支払日は、報道では12月15日(火)の見込みとされています。日程は年によって異なる場合があるため、日本年金機構の支払日の案内でご確認ください。精算の結果は、次の書類で確認できます。
- 年金振込通知書:12月の支払いの内訳(所得税額など)を確認できます。精算の結果の見方は、日本年金機構の案内でご確認ください。
- 公的年金等の源泉徴収票:翌年1月ごろに届く書類で、その年の支払金額と源泉徴収税額が確認できます。確定申告をする際にも使います。
- ねんきんネット:年金の受取額などの確認に使えます。
通知書の見方がわからないときは、年金事務所や年金相談センターに問い合わせるのが確実です。
精算されても確定申告が必要なケース
12月の自動精算は、あくまで「日本年金機構が把握している情報の範囲で、年金からの源泉徴収を精算する」ものです。次のようなケースでは、精算だけでは足りず、確定申告で調整が必要になる場合があります。
ケース1:令和8年に新たに扶養控除の対象になった親族がいる
令和8年12月1日以後の源泉徴収事務で、扶養親族・同一生計配偶者などの合計所得金額の要件が、58万円以下から62万円以下に引き上げられたと案内されています。これにより、これまで扶養の対象外だった親族が、新たに対象になる場合があります。年金の12月精算で、新たに対象になった親族の控除が反映されるかどうかは、日本年金機構・国税庁の案内でご確認ください。反映されない場合は、確定申告で調整できることがあります。具体的な取扱いは、年金事務所や税務署にご相談ください。
ケース2:12月に年金の支払いがない
精算は12月の支払時に行う仕組みのため、年の途中で受給が終わるなどして12月の支払いがない場合は、精算の機会そのものがありません。この場合は確定申告で調整することになる場合があります。
ケース3:年金以外の所得がある
公的年金等の収入が400万円以下で、公的年金等以外の所得金額が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要とされています(確定申告不要制度)。ただし、納める税金がなくなるだけで、源泉徴収された税金の還付を受けるには確定申告が必要です。また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。
確定申告をしたほうが戻る可能性があるケース
「申告しないと損」と考える必要はありません。自分の状況に当てはまるかを確認し、当てはまる人が手続きを検討する、というスタンスで見てください。12月の自動精算に含まれないとされる控除には、次のようなものがあります(二次情報を含むため、原本の確認をおすすめします)。
- 医療費控除:年間の医療費が一定額を超えた場合などに使える控除です。
- 寄附金控除:ふるさと納税などで、ワンストップ特例を使わない場合などに確定申告が必要になります。
- 社会保険料控除:国民年金保険料などを自分で払っている場合、控除証明書を使って申告します。
- 扶養親族等申告書の出し忘れ:提出していないと年金の源泉徴収に控除が反映されません。
確定申告の要否や書き方は、個別の事情で異なります。迷う場合は、税務署の相談窓口や税理士にご相談ください。
住民税への影響と手取りとの関係
12月の精算は、所得税(復興特別所得税を含む)の話です。住民税は、年金から特別徴収される場合があり、所得税とは計算の仕組みも時期も異なります。所得税の基礎的控除が増えても、住民税が自動的に同じように減るわけではありません。
令和9年分から、個人住民税の各種控除を受けたい人も、日本年金機構への扶養親族等申告書の提出対象になると案内されています。ただし、いつの住民税からの取扱いかは、原本で確認が必要です。順次送付されている令和9年分の申告書に同封された案内で、ご自身が提出の対象かどうかを確認してください。
手取りとの関係では、12月の振込額が他の月より多くなる場合があります。精算の結果を踏まえて、年末年始の家計の見通しを立てるとよいでしょう。ただし、還付額は人によって異なるため、「いくら増える」とは見込みすぎないのが安全です。
よくある勘違いと、還付を装う詐欺への注意
よくある勘違い
- 「年金受給者は年末調整がないから、12月に何も戻らない」→ 誤りです。12月に1年分の再計算(精算)が行われます。
- 「214万円未満なら税金がかからない」→ 誤りです。源泉徴収の対象外になるだけで、確定申告・住民税・保険料とは別の話です。
- 「申請しないと12月の還付は受けられない」→ 誤りです。精算は自動です。ただし医療費控除や寄附金控除などは、自分で申告しないと反映されません。
- 「確定申告不要制度に当てはまるなら、還付も不要」→ 誤りです。還付を受けるには確定申告が必要です。
- 令和7年分と令和8年分の混同。12月精算の算式では、控除額は令和7年分が10万円(下限16.5万円・12.5万円)、令和8年分が11万円(下限18万円・14万円)です。
日本年金機構を装った不審な連絡に注意
年金や税金の手続きの時期には、日本年金機構を装った不審なメール・SMS・電話に注意するよう、機構が注意喚起をしています。手続きの案内を装って、口座番号や暗証番号などの入力を求める連絡が届いた場合は、応じずに公式の窓口で確認してください。
- 12月の所得税の精算は自動です。申請や口座の再入力は不要です。
- 日本年金機構が、メールで口座番号などを尋ねることはないとされています。
- リンクは開かず、年金振込通知書、ねんきんネット、年金事務所など、公式の連絡手段で確認してください。
まとめ:判定の手順とチェックリスト
この記事の内容を、自分が該当するか確かめる手順にまとめます。上から順に確認すれば、「12月の自動精算を待つだけでよい」のか、「確定申告を検討する」のかが見えてきます。
- 源泉徴収の有無を見る年金振込通知書で、令和8年2月〜11月の支払いから所得税が引かれているかを確認します。
- 対象外の基準を確認年金額が源泉徴収の対象外の基準(65歳以上は214万円未満、65歳未満は164万円未満)にあたるかを確認します。
- 12月の通知書で精算を確認12月の年金振込通知書で、所得税額などの内訳を確認します。申請は不要です。
- 申告が必要な事情を探す医療費控除・寄附金控除・新たな扶養親族・12月の支払いなしに当てはまるかを確認します。
- 確定申告不要制度を確認年金収入が400万円以下で年金以外の所得が20万円以下か。還付を受けるなら申告が必要です。
- 迷ったら窓口へ相談税務署・年金事務所・税理士に確認します。個別の判断はこの記事ではできません。
チェックリスト
- 令和8年2月〜11月の年金から所得税が引かれているか、通知書で確認した
- 12月の年金振込通知書で、所得税額などの内訳を確認する予定
- 医療費・ふるさと納税・社会保険料の控除を使うか、手元の書類を確認した
- 令和8年に新たに扶養に入る親族がいないか確認した
- 日本年金機構を装ったメールやSMSのリンクを開かないと決めた
公式の確認先
- 日本年金機構 令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項
- 日本年金機構 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
- 国税庁 公的年金等を受給されている方へ
- 国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
- 日本年金機構 年金振込通知書
- 日本年金機構 不審なメール・SMSなどへの注意喚起(機構の案内ページ)
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