⚖️
税務に関する免責事項
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスではありません。税法は毎年改正されることがあり、個人の状況によって適用される規定が異なります。実際の税務判断・確定申告・節税対策については、税理士または税務署等の専門家にご相談ください

退職金の受け取り方で手取りが数百万円変わる

退職金は多くの会社員にとって人生最大の一時収入です。しかし、受け取り方を誤ると数百万円単位で税負担が増える可能性があります。退職金の受け取り方には主に「一時金(一括)」「年金(分割)」「一時金+年金の併用」の3パターンがあり、それぞれに適用される税制が異なります。

本記事ではiDeCoとは異なる「会社が支給する退職金・退職一時金・企業年金」に焦点を当て、税負担を最小化する受け取り方を解説します。

退職金2,000万円の手取り比較(勤続30年の例)

一時金で受取:退職所得控除1,500万円を差し引き、課税所得250万円→税額約50万円。手取り約1,950万円
全額を年金で受取(20年):年100万円を雑所得として毎年課税→総税額約200万円以上。手取り約1,800万円以下

一時金受取:退職所得控除の計算方法

退職金を一時金で受け取ると「退職所得」として分類され、退職所得控除が適用されます。計算式は以下の通りです。

  • 勤続年数20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
  • 勤続年数20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

退職所得の課税額は「(退職金 − 退職所得控除)÷ 2」に累進税率が適用されます。「÷ 2」の恩恵が極めて大きく、通常の給与所得と比べて実効税率が著しく低くなります。

勤続年数退職所得控除額退職金2,000万円の課税所得税額(概算)手取り
20年800万円(2,000-800)÷2 = 600万円約122万円約1,878万円
25年1,150万円(2,000-1,150)÷2 = 425万円約75万円約1,925万円
30年1,500万円(2,000-1,500)÷2 = 250万円約50万円約1,950万円
35年1,850万円(2,000-1,850)÷2 = 75万円約11万円約1,989万円
40年2,200万円0円(全額控除)0円2,000万円全額

※所得税・住民税合算の概算。復興特別所得税を含む。

年金受取:公的年金等控除の仕組み

退職金を企業年金(確定給付年金など)として分割で受け取る場合、「公的年金等」として雑所得に分類されます。この場合、公的年金等控除が適用されますが、国民年金・厚生年金と合算されるため、老後の他の年金収入が多いほど実効税率が上がります。

年金受取パターン年間企業年金公的年金合計(65歳以上)おおよその課税額(年間)
厚生年金のみ180万円ほぼ0(控除内)
+企業年金100万円100万円280万円約7万円/年
+企業年金200万円200万円380万円約26万円/年

年金受取は毎年少額ずつ課税される分、単年の税率は低くなります。しかし受取総額が同じなら、一時金の方が「÷ 2」効果と退職所得控除の恩恵から手取りが多くなるケースがほとんどです。

年金受取が有利になるケース(例外)

勤続年数が短く(20年未満)退職所得控除が少ない場合、または退職金が非常に大きく控除枠を大幅に超える場合は、年金受取で分散した方が税率を抑えられる可能性があります。個別の計算が必要です。

一時金と年金の損益分岐点

一時金 vs 年金の判断は「何歳まで生きるか」という長寿リスクとも関連します。年金方式は長生きするほど得をしますが、早期に死亡した場合は受け取り総額が少なくなります。

単純な税後手取りで比較した場合、多くのケースで一時金の方が有利です。ただし以下の観点で年金方式にメリットが出る場合があります。

  • 生活費の安定収入として月々の計画が立てやすい:一時金を自己運用するより規律が保てる人に向いている。
  • 運用リスクを取りたくない:一時金を受け取っても投資に回さず預金するだけなら、インフレ調整後の実質価値が年金より下がる場合も。
  • 企業年金の利率が市場より高い:一部の確定給付年金は保証利率1〜3%超のケースがあり、市場環境次第で有利なことも。

iDeCoや確定拠出年金との受取タイミング調整

退職金(会社支給)とiDeCo・企業型DCを同時に一時金で受け取る場合、退職所得控除の枠を奪い合う問題が生じます(前年以前5年以内に退職所得を受け取った場合、通算して控除額が計算される)。

具体的な対策は以下の通りです。

  1. 会社退職金 → iDeCo/DC一時金の順で5年以上ずらす:60歳で会社退職、65歳でiDeCo受取など。
  2. iDeCo/DCを一時金、会社退職金を年金で受取:DC残高が少ない場合は先に一時金で受け取り、大きい会社退職金を年金で受け取って税率を分散。
  3. 全額を一時金で受取、退職所得控除を最大適用:勤続40年で控除額2,200万円以上ある場合は全額無税になることも。
退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出

退職金受取時に勤務先経理部へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、退職所得控除が適用されず20.42%の源泉徴収がそのまま差し引かれます。翌年確定申告で還付は可能ですが、申告書提出の方が手間がかかりません。

受け取り方を決める際のチェックリスト

  1. 勤続年数から退職所得控除額を計算したか
  2. 会社退職金・iDeCo・企業型DCのそれぞれの受取金額を把握しているか
  3. 5年ルールを使って受取タイミングをずらす余地があるか
  4. 65歳以降の公的年金(厚生年金)の受給予定額を把握しているか
  5. 一時金受取後の資金を自己運用する予定か、それとも安定収入として年金受取が必要か

退職後の収入シミュレーションを試してみよう

公的年金・企業年金・資産取り崩しを合算した老後の月収を試算。退職金の受け取り方ごとの手取り収入の違いも確認できます。

年金シミュレーターで試算する →